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マンガやアニメから学ぶストーリーブランディング

「ストーリーのあるブランドは、心に残る。」

この言葉は、現代のマーケティングを象徴しています。単に「良い商品」や「優れたサービス」だけでは、人の心は動きません。なぜなら、情報があふれる時代において、機能や価格の差はすぐに埋まってしまうからです。

そんな中、今注目されているのが「ストーリーブランディング」。

つまり、“物語の力”を活用してブランドに共感や感情を生み出す手法です。

そして、ストーリーブランディングを学ぶうえで最も参考になるのが、実は「マンガ」や「アニメ」なのです。

ストーリーブランディングとは

1. ストーリーが人の記憶に残る理由

なぜ私たちは、マンガやアニメのキャラクターやセリフを何年経っても覚えているのでしょうか?

それは、ストーリーが“感情”を動かすからです。

脳科学的にも、人は「論理」よりも「感情」で記憶します。

たとえば、『ドラゴンボール』の孫悟空が仲間を守るために強敵に立ち向かう姿、『ワンピース』のルフィが仲間の夢を信じて共に冒険する姿、『鬼滅の刃』の炭治郎が家族の想いを背負って戦う姿――。

これらは単なる戦闘シーンではなく、「信念」「仲間」「成長」という普遍的なテーマを描いています。

この“感情に訴える物語構造”こそ、ブランディングに応用できる重要なポイントです。

2. ブランドには「主人公」が必要

マンガやアニメには、必ず「主人公」がいます。

そして、その主人公には「目的(ゴール)」と「課題(障害)」があります。

ブランディングでも同じことが言えます。

企業や個人のブランドもまた、「何のために存在するのか(目的)」「どんな困難を乗り越えようとしているのか(ストーリー)」を明確にすることで、人の心をつかむことができます。

たとえば、アップルは“人々にクリエイティブな力を取り戻す”という目的を掲げ、巨大企業との戦いを通して自らの哲学を示しました。

ユニクロは“服を通じて、あらゆる人の生活を豊かにする”という目的を持ち、価格競争ではなく「LifeWear」という新たな価値を生み出しました。

つまり、ブランドは「何を売るか」よりも「なぜそれをするのか」が物語の軸になるのです。

3. 共感を呼ぶのは「欠点のあるヒーロー」

マンガの主人公は、最初から完璧ではありません。

弱さやコンプレックスを抱え、それを乗り越えていく姿に私たちは感情移入します。

ブランドも同じで、「最初から完璧」な企業や人物には共感が生まれにくいのです。

むしろ、「失敗した経験」「苦労した過去」「試行錯誤のプロセス」こそが、ブランドの“人間味”を生みます。

たとえば、ある小さなカフェが「地元で愛される味をつくるため、毎日コーヒー豆を焙煎してきた」と語る。

その背景にある努力や葛藤が、消費者の共感を呼び、「応援したい」という感情を生みます。

「強さ」よりも「弱さに向き合う姿勢」。

それが、現代のストーリーブランディングにおける共感の鍵です。

4. 「仲間との関係性」がブランドを深める

多くの名作アニメには、「仲間との絆」が描かれています。

ルフィが仲間と共に航海するように、ナルトが仲間を信じて戦うように――。

ブランドも、顧客・スタッフ・パートナーといった“仲間”との関係が物語を豊かにします。一方的に「商品を売る」だけでは、ブランドは長続きしません。

顧客と共に価値をつくりあげる姿勢――つまり「共創」が大切です。

SNSの時代、ユーザー自身が“語り手”になることも多くなっています。ファンが自発的に投稿し、ブランドの物語を拡張していく。

これこそが、マンガ的な“チームストーリー”が生み出す現代のブランドの形です。

5. 成長ストーリーがブランドを進化させる

物語の魅力の一つは、「主人公が成長すること」。

最初は未熟でも、仲間と出会い、壁を越えるたびに強くなる――このプロセスに、私たちは感動します。

ブランドにも、同じ“成長物語”があります。

創業期の苦労、転換期の挑戦、社会問題への取り組みなど、成長の過程を発信することで、ブランドに「時間軸のある信頼感」が生まれます。

たとえば、最初は小さな工房だった企業が、地域の課題解決に挑み、やがて全国展開を果たす――。

このような“変化の軌跡”を見せることで、顧客は単なる消費者ではなく、“共に歩むファン”になります。

6. ビジュアルと世界観で“没入体験”をつくる

マンガやアニメが多くの人を惹きつける理由の一つは、「世界観の一貫性」です。キャラクター、背景、セリフ、音楽――すべてがひとつの物語の中で統一されています。

ブランディングでも同じで、ロゴやサイトデザイン、コピーライティング、店舗の雰囲気などが一貫していると、ユーザーは“その世界に没入”できます。

ブランドを「ひとつの作品」として設計することが、ストーリーブランディングの完成度を高めるポイントです。

7. 結末よりも“続きたくなる物語”を

優れたマンガやアニメには、共通して「終わっても心に残る余韻」があります。

つまり、物語は“完結”よりも“継続”が大切なのです。

ブランドも同じで、「購入して終わり」ではなく、「次も関わりたい」「またこの世界に触れたい」と思わせる体験をつくることが理想です。

顧客が次のエピソードを楽しみにするように、ブランドも常に新しい物語を紡ぎ続ける必要があります。

ストーリーブランディングとは | まとめ

マンガやアニメは、ただの娯楽ではなく、「共感」「成長」「一貫性」「仲間」という普遍的な物語構造を持っています。

そして、それらは現代のブランディングにおいて最も重要な要素です。

“モノ”を売る時代から、“物語”を届ける時代へ。ブランドをひとつの作品と捉え、その世界観に人々を巻き込んでいくこと。

それが、これからの時代に生き残るための「ストーリーブランディング」の本質です。

あなたのブランドには、どんな物語がありますか?

そして、その物語を誰と一緒に紡いでいきたいですか?

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