日本のフリーランス増加傾向はなぜ?その理由と働き方の変化
- 2024/9/13
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日本のフリーランス人口は増加の一途を辿っており、働き方改革やコロナ禍の影響もあり、その勢いはさらに加速しています。
では、なぜ日本ではフリーランスが増え続けているのでしょうか?
この記事では、日本のフリーランス増加の背景にある理由を、社会構造の変化、テクノロジーの進化、個人の価値観の多様化といった観点から詳しく解説していきます。
1. 日本のフリーランス増加の現状
近年、日本においては働き方の多様化が進み、フリーランスとして働く人が増加傾向にあります。ここでは、日本のフリーランス増加の現状について、統計データなどを交えながら詳しく解説していきます。
1.1 フリーランス人口の推移と予測
ランサーズ株式会社が発表した「フリーランス動向調査2022年版」によると、2022年時点の国内フリーランス人口は推定1,244万人で、2021年と比較して約7万人増加しました。これは日本の労働人口の約19%に相当し、今後も増加していくと予想されています。
参考:フリーランス動向調査2022年版|日本のフリーランス人口、1,244万人と推計|ランサーズ株式会社
年度 | フリーランス人口(万人) | 前年比 |
---|---|---|
2015 | 913 | – |
2016 | 965 | 5.7% |
2017 | 1,062 | 10.1% |
2018 | 1,119 | 5.4% |
2019 | 1,030 | -7.9% |
2020 | 1,143 | 10.9% |
2021 | 1,177 | 3.0% |
2022 | 1,244 | 5.7% |
(出典:ランサーズ株式会社「フリーランス動向調査2022年版」)
1.2 業種別のフリーランス増加状況
フリーランスとして働く人の業種は多岐にわたりますが、特に増加が目立つのはIT関連、Web関連の業種です。これは、インターネットやITツールの進化により、場所にと拘らず仕事ができるようになったことが大きな要因と言えるでしょう。
具体的には、Webデザイナー、Webエンジニア、プログラマー、システムエンジニア、Webライター、Webマーケターなどが挙げられます。これらの業種は、専門性の高いスキルや知識が求められる一方で、フリーランスとして独立しやすいという特徴があります。
また、近年では、従来型の企業に所属しながら副業としてフリーランスの仕事を行う人も増えています。副業として人気が高いのは、WebライターやWebデザイナーなど、比較的短時間で成果を出しやすい仕事です。
その他、フリーランスとして増加傾向にある業種として、以下のようなものが挙げられます。
- コンサルタント
- デザイナー(グラフィックデザイナー、UI/UXデザイナーなど)
- ライター・エディター
- フォトグラファー・ビデオグラファー
- 翻訳者・通訳者
- インストラクター・講師
これらの業種は、専門性の高さや独自のスキル・経験を活かせることが魅力となっています。
また、働き方や報酬の面で柔軟性が高いため、ワークライフバランスを重視する人や、自分のペースで働きたいという人にとって魅力的な選択肢となっています。
2. 日本のフリーランスが増加傾向にある理由
冒頭でもお伝えしましたが、近年日本ではフリーランスとして働く人が増加傾向にあります。
従来の雇用形態から、より自由で柔軟な働き方へとシフトしつつあることが背景として挙げられます。
フリーランス増加の要因として、社会構造の変化、テクノロジーの進化、個人の価値観の多様化という3つの大きな流れが考えられます。
2.1 社会構造の変化
従来の日本型雇用モデルは、終身雇用と年功序列を前提としていましたが、近年では、経済のグローバル化や雇用環境の変化により、このモデルは崩壊しつつあります。
企業は、競争激化や業績悪化に伴い、雇用維持が困難となり、リストラや早期退職を募るケースも増加しました。
その結果、 安定した雇用を求めるよりも、自身のスキルや経験を活かして、自由に働きたいと考える人が増えている のです。
2.1.1 終身雇用制度の崩壊
かつては当たり前とされていた終身雇用制度は、現在では崩壊しつつあります。
企業は、グローバル競争の激化や、IT技術の進化による産業構造の変化に対応するために、 雇用の流動化を進め、必要な人材を必要な時に必要なだけ雇用する傾向 が強まっています。
そのため、労働者側も、一つの企業に依存するのではなく、自身のスキルやキャリアを磨くことで、 転職市場でも通用する人材 となることが求められています。
終身雇用制度の崩壊は、フリーランスとして働くことを選択する人が増える一因となっています。
2.1.2 副業・兼業の普及
政府が働き方改革を推進する中で、副業や兼業を認める企業が増加しています。
これにより、 会社員として働きながら、空いた時間でフリーランスとして活動する 人が増えています。
副業・兼業は、本業で得たスキルや経験を活かせるだけでなく、新たなスキルを身につける機会にもなります。
また、収入源を増やすことで、 経済的な安定 を得られるというメリットもあります。副業・兼業の普及は、フリーランス市場の拡大と、多様な働き方の実現を後押ししています。
2.2 テクノロジーの進化
インターネットやITツールの進化は、フリーランスにとって大きな追い風となっています。
場所にとらわれずに仕事を受注したり、業務を効率化したりすることが可能になりました。
また、オンラインプラットフォームの登場により、企業とフリーランスのマッチングが容易になり、仕事の幅が広がっています。
2.2.1 インターネットの普及とITツールの進化
インターネットの普及とITツールの進化は、フリーランスの働き方を大きく変えました。
場所にとらわれずに仕事ができる ようになったことで、地方在住者や海外在住者でもフリーランスとして活躍することが可能になりました。
また、Web会議システムやチャットツールなどを活用することで、クライアントとのコミュニケーションもスムーズに行えるようになりました。
さらに、プロジェクト管理ツールや経理ソフトなどのITツールを使うことで、業務効率化も図れるようになっています。
2.2.2 オンラインプラットフォームの台頭
クラウドソーシングサービスやフリーランスエージェントなど、 企業とフリーランスをマッチングするオンラインプラットフォーム が台頭してきたことも、フリーランス増加の要因の一つです。
これらのプラットフォームを利用することで、フリーランスは、自身のスキルや経験に合った仕事を見つけやすくなりました。
また、企業側も、必要なスキルを持った人材を、必要な期間だけ確保することができるようになりました。
オンラインプラットフォームは、フリーランス市場の活性化に大きく貢献しています。ランサーズやクラウドワークスなどが有名です。
2.3 個人の価値観の多様化
従来の「会社に雇用される」という働き方だけでなく、 「自分の力で生きていく」という価値観 を持つ人が増えています。
ワークライフバランスを重視したり、自己実現を追求したりするために、フリーランスという働き方を選択する人が増えているのです。
2.3.1 ワークライフバランスの重視
近年、ワークライフバランスを重視する人が増えています。
仕事とプライベートの両方を充実させたい と考える人が、フリーランスという働き方を選択するケースが増えています。
フリーランスは、自分の裁量で仕事量や働く時間帯を調整できるため、プライベートの時間も確保しやすくなります。
企業に勤めていると、どうしても仕事に時間が取られがちですが、フリーランスであれば、家族や友人との時間を大切にしたり、趣味に没頭したりすることができます。
2.3.2 自由な働き方への憧れ
場所や時間に縛られず、自分のペースで自由に働きたいと考える人が増えています。
フリーランスは、自分の裁量で仕事を進めることができるため、こうしたニーズに合致しています。
企業に勤めていると、上司や会社のルールに縛られることも多いですが、フリーランスであれば、自分の好きなように仕事をすることができます。
また、複数の仕事 を掛け持ちすることで、様々な経験を積むことができます。
2.3.3 スキルアップ・自己実現の追求
自分のスキルや経験を活かして、社会に貢献したい、自分の可能性を試したいと考える人が増えています。
フリーランスは、自分の力で仕事を受注し、成果を上げていく必要があるため、自己成長を実感しやすい働き方です。
企業に勤めていると、自分の仕事が会社の利益にどのように貢献しているのか実感しにくいこともありますが、フリーランスであれば、自分の仕事がダイレクトにクライアントの利益に繋がるため、仕事のやりがい を感じやすくなります。
これらの要因が複合的に作用し、日本のフリーランスは増加傾向にあるのだと考えられます。
3. フリーランスの働き方とメリット・デメリット
フリーランスとして働くことを考える上で、働き方やメリット・デメリットを理解しておくことは重要です。
ここでは、代表的な働き方と、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
3.1 フリーランスの働き方
フリーランスの働き方は多岐にわたりますが、代表的なものとして、以下の3つが挙げられます。
3.1.1 プロジェクトベース
プロジェクトベースとは、クライアントから依頼された案件単位で契約を結び、仕事を進めていく働き方です。Webサイト制作やシステム開発、デザイン、ライティングなど、様々な分野でみられます。報酬は、プロジェクト完了時に一括で支払われるケースや、分割で支払われるケースがあります。
3.1.2 時間単価制
時間単価制は、作業時間に応じて報酬が支払われる働き方です。時給や日給で契約を結ぶことが多く、コンサルティングやプログラミング、翻訳などの専門性の高い仕事でよく見られます。時間管理が重要となり、正確な記録が求められます。
3.1.3 成果報酬型
成果報酬型は、成果に応じて報酬が支払われる働き方です。アフィリエイトや営業代行、インセンティブ型の業務委託などが該当します。成果が報酬に直結するため、モチベーション高く仕事に取り組めますが、成果が出なければ収入が得られないというリスクも伴います。
3.2 フリーランスのメリット
フリーランスには、会社員にはない様々なメリットがあります。ここでは、主なメリットを5つ紹介します。
3.2.1 自由な働き方ができる
フリーランスの最大のメリットは、時間や場所に縛られずに、自分のペースで自由に働けることです。通勤時間や人間関係のストレスから解放され、家族との時間や趣味の時間も確保しやすくなります。自分のライフスタイルに合わせて、仕事量や働く時間を調整できる点は大きな魅力です。
3.2.2 収入アップの可能性
フリーランスは、自分のスキルや実績次第で、会社員時代よりも高い収入を得られる可能性があります。単価の高い仕事を受注したり、複数の案件を掛け持ちすることで、収入アップを目指せます。また、経費計上による節税効果も期待できます。
3.2.3 スキルアップ・自己成長
フリーランスは、様々なクライアントやプロジェクトに関わる中で、幅広いスキルや経験を積むことができます。新しい技術や知識を積極的に習得することで、市場価値の高い人材へと成長できます。また、自分の力で仕事を進めていく中で、問題解決能力や自己管理能力も高まります。
3.2.4 人間関係のストレスが少ない
フリーランスは、会社組織に属さないため、人間関係のストレスが少なく、煩わしい人間関係に悩まされることもありません。自分のペースで仕事に集中できるため、ストレスフリーな環境で働くことができます。
3.2.5 仕事内容を選べる
フリーランスは、自分のスキルや経験、興味のある分野の仕事を選択することができます。やりがいを感じられる仕事に集中することで、モチベーションを高く維持しながら働くことができます。
3.3 フリーランスのデメリット
自由な働き方ができる一方で、フリーランスには克服すべきデメリットも存在します。ここでは、
主なデメリットを4つ紹介します。
3.3.1 収入の不安定さ
フリーランスは、会社員のように毎月安定した収入を得られるとは限りません。案件の受注状況によって収入が変動するため、収入が不安定になりがちです。特に、仕事を始めたばかりの頃は、収入が安定せず、生活費の確保に苦労するケースも少なくありません。
3.3.2 社会保障の問題
フリーランスは、会社員と比べて社会保障が手薄になる点は否めません。健康保険や年金保険は、自分で加入する必要があり、会社員のように会社が負担してくれることはありません。また、失業保険や労災保険も適用されないため、万が一の際に備えて、自身で対策を講じておく必要があります。
フリーランス協会フリーランス協会などの団体に加入することで、福利厚生を充実させることも可能です。
3.3.3 孤独感
フリーランスは、一人で仕事をする時間が多いため、孤独を感じやすくなることがあります。会社員のように、同僚とコミュニケーションをとったり、相談したりする機会が少ないため、孤独感を抱えやすい点はデメリットと言えるでしょう。積極的にコミュニティに参加するなど、孤独感を解消するための工夫が大切です。
3.3.4 自己管理の難しさ
フリーランスは、時間やタスクを自分で管理する必要があるため、自己管理能力が求められます。モチベーションを維持しながら、計画的に仕事を進めていくためには、高い自己管理能力が不可欠です。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
働き方 | 自由な働き方ができる、時間や場所に縛られない | 自己管理が難しい、孤独を感じやすい |
収入 | 収入アップの可能性がある、成果が報酬に反映される | 収入が不安定、案件獲得の努力が必要 |
スキルアップ | 幅広いスキル・経験が積める、自己成長を実感しやすい | スキルアップの機会を自ら作る必要がある |
人間関係 | 人間関係のストレスが少ない、煩わしい人間関係から解放される | 孤独を感じやすい、コミュニケーション能力が低下する可能性 |
社会保障 | 社会保障が手薄、自分で手続きを行う必要がある |
このように、フリーランスにはメリットだけでなくデメリットも存在します。
フリーランスとして成功するためには、これらのメリット・デメリットを理解した上で、自分自身で適切な対策を講じていくことが重要です。