個人事業主の資金調達方法とは
- 2024/9/10
- 個人事業主
前回、個人事業主が何かビジネスを始める際に、どうやってお金を借りるのか、そもそも融資制度とは何なのか等について解説しました。
合わせて読む → 個人事業主が利用できる融資制度
本記事では、具体的な融資制度の種類や融資の申請方法などについて説明します。
1. 主な個人事業主向け融資制度
個人事業主が利用できる代表的な融資制度には、以下のようなものがあります。
1.1 日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫は、政府系金融機関として中小企業や個人事業主への融資を行っています。事業の段階や規模に応じて、様々な種類の融資制度が用意されています。
1.1.1 新規開業資金
これから事業を始める方向けの融資制度です。創業計画書の提出が必須となります。
資金名 | 融資限度額 | 金利(参考) | 返済期間 |
---|---|---|---|
新規開業資金 | 7,200万円 | 年1.61%~ | 設備資金:最大20年以内(うち据置期間5年以内) 運転資金:最大7年以内 |
引用元:日本政策金融公庫「新規開業資金」
1.1.2 事業資金
事業を営んでいる個人事業主向けの運転資金や設備資金の融資制度です。業種や事業規模によって、様々な制度があります。
資金名 | 融資限度額 | 金利(参考) | 返済期間 |
---|---|---|---|
普通貸付 | 設備資金:7億2,000万円以内 運転資金:4億8,000万円以内 | 年1.87%~ | 設備資金:原則7年以内 運転資金:原則7年以内 |
マル経(経営改善貸付) | 2,800万円以内 | 年0.93%~ | 設備資金:7年以内 運転資金:7年以内 |
引用元:日本政策金融公庫「資金使途別 資金調達ナビ」
1.2 信用保証協会の保証付き融資制度
信用保証協会は、中小企業や個人事業主が金融機関から融資を受ける際に、保証人となる機関です。信用保証協会の保証があれば、比較的低金利で融資を受けやすくなります。
- 制度の内容:信用保証協会が保証人となることで、金融機関からの融資を受けやすくする制度
- メリット:
- 比較的低金利で融資を受けられる
- 保証料は都道府県や市区町村が一部補助してくれる場合がある
引用元:信用保証協会
1.3 地方自治体の融資制度
都道府県や市区町村などの地方自治体が、地元の中小企業や個人事業主向けに独自の融資制度を設けている場合があります。地域活性化や創業支援などを目的としたものが多く、低金利や無担保などの優遇措置が受けられる場合もあります。
- 制度の内容:地方自治体が独自に設けている融資制度
- メリット:
- 低金利や無担保などの優遇措置が受けられる場合がある
- 地域経済の活性化に貢献できる
1.4 民間金融機関の融資制度
都市銀行、地方銀行、信用金庫などの民間金融機関も、個人事業主向けの融資制度を提供しています。事業内容や経営状況によって、融資条件は異なります。
- 制度の内容:民間金融機関が提供する個人事業主向けの融資制度
- メリット:
- 銀行との取引実績や事業内容によっては、好条件で融資を受けられる場合がある
- 様々な金融商品と組み合わせることができる場合がある
これらの融資制度は、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。自分に合った制度を選ぶことが重要です。どの制度が最適かは、事業内容や資金ニーズ、経営状況などを考慮して判断する必要があります。専門家である金融機関の担当者や経営コンサルタントなどに相談しながら、最適な資金調達方法を検討しましょう。
2. 融資制度の申請方法と注意点
個人事業主が融資制度を利用するには、それぞれの制度に定められた申請方法に沿って手続きを進める必要があります。ここでは、一般的な融資制度の申請方法と、注意すべきポイントについて解説します。
2.1 事業計画書の作成
融資制度の審査では、事業計画書が重要な役割を果たします。事業計画書は、事業内容、将来の見通し、返済計画などを具体的に示す書類です。融資を受けるためには、実現可能性が高く、収益性が見込める事業計画書を作成する必要があります。
2.1.1 事業計画書に記載すべき内容
- 事業の概要(事業内容、商品・サービスの特徴、ターゲットなど)
- 市場分析(市場規模、競合状況、成長性など)
- 売上計画(売上目標、売上根拠など)
- 資金計画(必要資金の額、資金使途、調達方法など)
- 返済計画(返済期間、返済方法、返済原資など)
2.1.2 事業計画書作成のポイント
- 具体的に記述する:数値や具体的な根拠を示し、説得力を持たせることが重要です。
- 実現可能性を意識する:目標が高すぎる、根拠が薄いなど、実現可能性が低い事業計画は審査に通らない可能性があります。
- 読みやすさに配慮する:図表やグラフなどを活用し、読みやすく理解しやすい事業計画書を作成しましょう。
日本政策金融公庫のウェブサイトでは、創業計画書の作成例や事業計画書の作成例が公開されています。参考にしてみましょう。
2.2 必要書類の準備
融資制度の申請には、事業計画書以外にも様々な書類が必要です。必要な書類は、融資制度や金融機関によって異なりますが、一般的には以下の様な書類が求められます。
区分 | 書類名 | 備考 |
---|---|---|
本人確認書類 | 運転免許証 | 表面・裏面のコピー |
個人番号カード | 表面・裏面のコピー | |
事業を証明する書類 | 確定申告書(過去2~3期分) | 税務署の受付印があるもの |
開業届出書の控え | ||
許認可証等 | 事業を行う上で必要な許認可がある場合 | |
その他 | 金融機関が求める書類 |
必要書類は、事前に金融機関に確認し、漏れなく準備しておきましょう。
2.3 審査
金融機関は、提出された書類に基づいて、融資の可否や融資条件を判断します。審査では、主に以下の様な点が評価されます。
2.3.1 審査項目
- 事業の実行可能性
- 収益性
- 返済能力
- 経営者の資質
- 担保・保証人の有無
審査期間は、融資制度や金融機関によって異なりますが、一般的には数日から数週間程度です。
2.4 注意点
融資制度の利用にあたっては、以下の様な点に注意が必要です。
2.4.1 資金使途は融資制度の目的に沿っているか
融資制度には、それぞれ資金使途が定められています。融資制度の目的に沿わない資金使途では、審査に通らない可能性があります。
2.4.2 返済計画は無理がないか
返済計画は、無理のない範囲で設定する必要があります。返済が滞ると、事業の継続が困難になる可能性があります。返済期間や返済方法などを検討し、無理のない返済計画を立てましょう。
2.4.3 金利や保証料などのコストを把握しているか
融資制度を利用する際には、金利や保証料などのコストが発生します。コストを事前に把握し、返済計画に無理がないか確認しましょう。
2.4.4 複数の金融機関に相談する
融資制度は、様々な金融機関が提供しています。複数の金融機関に相談し、比較検討することで、より有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
3. まとめ
個人事業主が資金調達する際には、日本政策金融公庫や信用保証協会、地方自治体など、様々な機関が提供する融資制度の活用が有効です。]
これらの制度は、それぞれ融資条件や審査基準が異なります。そのため、事業内容や資金ニーズ、返済能力などを考慮し、自身に最適な制度を選ぶことが重要となります。
融資申請にあたっては、事業計画書の作成や必要書類の準備が求められます。
特に、事業計画書は、事業の将来性や返済能力を評価する上で重要な資料となるため、しっかりと作成する必要があります。
融資制度の利用は、事業の成長を促進する上で大きな力となります。
この記事を参考にして、自身に合った制度を選び、積極的に活用していきましょう。