どれだけ素晴らしい商品やサービスを持っていても、「知られていないものは、存在しないのと同じ」です。
この認識のもと、多くの企業が認知拡大に取り組んでいます。しかし、実はこの「認知戦略」自体が間違った方向に進んでいるケースが非常に多いのです。
広告に多額の予算をかけても反応がない、SNSを毎日更新しているのにフォロワーが増えない——。
それはもしかすると、認知戦略に潜む“罠”にハマってしまっているのかもしれません。
本コラムでは、認知戦略で多くの企業が陥りがちな「5つの罠」と、それを乗り越えるためのポイントについて解説します。
ターゲットの設定が曖昧
「できるだけ多くの人に知ってもらいたい」——。この気持ちは理解できますが、マーケティングの鉄則は「広く浅く」ではなく「狭く深く」です。
よくある失敗が、「誰に向けた商品か」がぼやけたまま発信してしまうこと。
メッセージが刺さらず、誰の心にも響かない結果になります。
対策:理想の顧客像を徹底的に明確化する
性別・年齢・職業・ライフスタイル・悩み・欲求など、できるだけ具体的にペルソナを描きましょう。
「〇〇な悩みを抱える、30代の女性会社員」のように、発信の対象を明確にすることで、情報の届け方や媒体の選定も変わります。
伝えたいことばかりを一方的に発信している
「うちの商品はこれがすごい」「この技術が他社と違う」——。確かにその“強み”は重要です。
しかし、受け手である顧客にとっては、「それが自分にどう関係あるの?」という視点が抜けていれば、まったく響きません。
対策:顧客の「悩み」や「欲求」を起点に情報を組み立てる
「自社の伝えたいこと」ではなく、「顧客が知りたいこと」を主軸に据えましょう。
たとえば、「疲労回復に特化した整体」という表現よりも、「朝までぐっすり眠れる体を取り戻しませんか?」の方が、顧客視点では刺さります。
媒体選定が自己都合になっている
「とりあえずインスタで発信」「チラシを撒けばOK」——。こうした自己都合の媒体選定も、認知拡大が進まない要因のひとつです。
どんなに魅力的なコンテンツを発信しても、ターゲットが使っていない媒体では“存在していない”のと同じです。
対策:ターゲットが「日常的に接している媒体」に注目する
ターゲットがInstagramを使っているのか、LINE公式を見ているのか、Google検索を使って情報を集めているのか——。
「自分が発信したい場所」ではなく、「相手が受け取りやすい場所」に軸を置きましょう。
一度の接触で成果を求めてしまう
「広告を出したのに問い合わせが来ない」「SNS投稿したのに反応がない」——。これは認知戦略でよくある“焦り”による錯覚です。
人は、商品やブランドを知ってから行動に移るまでに“複数回の接触”が必要です。これを「ザイアンス効果(単純接触効果)」とも言います。
対策:継続的な接点づくりを前提に設計する
見込み顧客と何度も接触できるよう、SNS、メルマガ、LINE、ブログなどを活用し、“忘れられない関係”を築く設計が重要です。
1回の発信で成果を求めるのではなく、「接点の蓄積こそが信頼の種」と考えましょう。
「認知=ゴール」と考えてしまう
最後に最も根深い盲点。それは、「認知されること」が最終目的になってしまうことです。
確かに認知は入口として大切ですが、認知はあくまで「スタート地点」でしかないのです。
そこから「興味→検討→行動(購入)」というプロセスをどう設計するかが重要です。
対策:認知後の導線を明確に設計する
・認知:SNSや広告で存在を知ってもらう
・興味喚起:魅力的なコンテンツや体験談を提示
・検討:他社との違いや実績を提示する
・行動:問い合わせや予約への導線をスムーズにする
このように、認知後の流れを丁寧に設計することで、初めて“認知”が成果につながります。
マーケティングの盲点 | まとめ
マーケティングの「認知戦略」は、売上や成長の第一歩です。しかし、そのアプローチがズレていると、いくら努力しても結果に結びつきません。
認知戦略における5つの罠:
・ターゲットが曖昧
・自分の言いたいことだけを発信
・媒体の選定ミス
・短期的な結果を求めすぎる
・認知がゴールになってしまう
これらを一つひとつ見直すことで、「知られても、選ばれない」状態から、「知ってもらい、信頼され、選ばれる」ブランドへと変わっていくことができます。
伝えるだけでなく、伝わる設計を。
その意識が、これからのマーケティングの鍵になります。