「好きなことを仕事にしたい」
多くの人が、一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。好きなことをしてお金を稼げれば、毎日が楽しくなり、仕事も苦痛ではなくなる。そんなイメージを持つ人も少なくありません。
実際、好きなことを仕事にできれば、大きなやりがいや充実感につながることがあります。
しかし、「好きなことを仕事にする」ことには、いくつかの落とし穴もあります。
好きだからこそ、思うように楽しめなくなる。好きなことに責任や納期が加わり、以前のような純粋な気持ちを失ってしまう。
大切なのは、好きなことを否定することではありません。好きな気持ちだけで、仕事が成り立つとは限らないと知っておくことです。
好きなことにも、仕事になると責任が生まれる
趣味であれば、自分の好きなタイミングで楽しめます。気分が乗らなければ休んでもよく、失敗しても大きな問題にはなりません。
しかし、それが仕事になると状況は変わります。
納期を守る。
お客様の要望に応える。
品質を安定させる。
売上や利益を考える。
自分が楽しめるかどうかに関係なく、やらなければならない場面が出てきます。
例えば、料理が好きな人が飲食店を始めた場合、料理をつくることだけが仕事ではありません。仕入れ、清掃、接客、経理、宣伝など、さまざまな業務が必要になります。好きなことを仕事にすると、好きなこと以外の作業も引き受けなければなりません。
その現実を理解していないと、「思っていた仕事と違う」と感じてしまうのです。
好きなことと、得意なことは違う
好きなことだからといって、必ずしも得意とは限りません。
また、得意なことだからといって、仕事として求められるとは限りません。
この3つは、似ているようで別のものです。
* 自分が好きなこと
* 自分が得意なこと
* 相手がお金を払ってでも求めること
仕事として成立させるには、この重なる部分を見つける必要があります。
例えば、写真が好きでも、撮影技術や営業力が不足していれば、すぐに仕事になるとは限りません。
一方で、写真を撮ること自体よりも、「相手の魅力を引き出す」「分かりやすく提案する」といった能力が評価される場合もあります。
好きなことをそのまま商品にするのではなく、好きなことを通じて、誰にどんな価値を提供できるのかを考えることが重要です。
好きなことを嫌いになることもある
好きなことを仕事にした結果、以前ほど楽しめなくなる人もいます。
仕事では、結果を求められます。売上が落ちれば不安になり、評価されなければ自信を失うこともあります。
好きで始めたはずなのに、数字や他人の評価ばかりが気になってしまう。
「やりたいからやる」のではなく、「やらなければならないからやる」状態になる。
こうなると、好きなことが義務に変わってしまいます。
もちろん、仕事には努力や我慢も必要です。しかし、好きなことをすべて仕事にするのではなく、趣味として残しておく選択も悪くありません。
好きなことを守るために、あえて仕事にしない。
それも、自分らしい働き方のひとつです。
好きなことは、仕事の一部でもいい
好きなことを仕事にするというと、好きなことだけで生活するイメージがあります。
しかし、実際には、仕事の一部に好きなことを取り入れる方法もあります。
人と話すことが好きなら、接客や営業に生かす。
文章を書くことが好きなら、広報や情報発信に取り組む。
スポーツが好きなら、教育やイベント運営に関わる。
デザインが好きなら、資料作成やウェブ制作に生かす。
このように、好きなことを仕事の中に少しずつ組み込むことで、無理なくやりがいを増やせます。
好きなことを職業名にする必要はありません。
自分が大切にしている感覚や価値観を、仕事の中で生かすことも立派な方法です。
「好き」だけでなく「続けられるか」を考える
仕事を選ぶとき、好きかどうかは大切な判断材料です。
しかし、それだけで決めるのではなく、「その仕事を続けられるか」も考えてみる必要があります。
苦手な作業があっても取り組めるか。
収入が安定するまで努力できるか。
お客様の要望に合わせて変化できるか。
好きではない仕事も、必要な仕事として受け入れられるか。
仕事には、好きな部分と、そうではない部分があります。その両方を理解したうえで選ぶことが、長く続けるための準備になります。
「好きなことを仕事にする」の落とし穴は、好きな気持ちが間違っていることではありません。好きという感情だけで、仕事のすべてを支えようとしてしまうことです。
好きなことを仕事にしてもいい。
好きなことを趣味として守ってもいい。
好きなことを仕事の一部に取り入れてもいい。
大切なのは、世間の理想に合わせるのではなく、自分が無理なく続けられる形を見つけることです。好きなことを仕事にすることよりも、仕事の中に「好き」と「納得」を増やしていくこと。
そのほうが、長い人生を豊かにする働き方につながるのかもしれません。