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経費の基礎知識と判断基準 (2025年版)

2025年5月14日

個人事業主やフリーランスとして活動するうえで、「経費」の正しい知識は避けて通れません。経費を適切に計上することは、節税や収益性の向上に直結する大切な要素です。しかし、「これは経費にできる?」「どこまでがプライベートでどこからが事業用?」と迷う場面も多いのではないでしょうか。

この記事では、経費の基本的な考え方から、判断基準、2025年最新版の経費計上可能な具体例までをわかりやすく解説します。

正しい知識を身につけて、健全な経営と賢い節税を目指しましょう。

経費とは?個人事業主・フリーランスが知っておくべき基礎知識

経費とは、事業所得を得るために直接必要な支出のことを指します。個人事業主やフリーランスにとって、経費を正しく理解し、適切に計上することは、税負担を軽減し、事業の収益性を高める上で非常に重要です。

経費と認められるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 事業に関連していること
  2. 収益に結びつく可能性があること
  3. 必要かつ妥当な金額であること

これらの要件を満たさないプライベートな支出は、経費として計上することはできません。

1. 経費の種類

経費は、その性質によって様々な種類に分類されます。主なものとしては以下のようなものがあります。

経費の種類内容
消耗品費事業のために消費される少額の備品文房具、事務用品など
減価償却費高額な資産の費用を耐用年数に応じて分割して計上するものパソコン、車など
水道光熱費事業に用いる部分の水道、光熱費電気代、ガス代など
旅費交通費事業のための移動にかかる費用電車賃、バス代、ガソリン代など
通信費事業のための通信にかかる費用電話代、インターネット回線費用など
広告宣伝費事業の宣伝広告にかかる費用Web広告費、チラシ印刷代など
交際費事業関係者との交際にかかる費用接待飲食費、贈答品代など
地代家賃事業用の土地や建物の賃借料事務所の家賃など

2. 勘定科目

経費を計上する際には、適切な勘定科目を用いる必要があります。勘定科目とは、経費の内容を分類するための名称のことです。主な勘定科目には以下のようなものがあります。

  • 消耗品費
  • 旅費交通費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 接待交際費
  • 地代家賃
  • 減価償却費
  • 給料賃金
  • 外注工賃
  • 租税公課
  • 保険料

適切な勘定科目を用いることで、経費の管理がしやすくなり、税務調査の際にもスムーズな対応が可能になります。

3. 青色申告と白色申告

個人事業主には、青色申告と白色申告の2種類の申告方法があります。青色申告は、複式簿記による記帳が求められますが、最大65万円の控除を受けることができます。白色申告は、簡易な記帳方法で申告できますが、青色申告のような控除はありません。どちらの申告方法を選択するかは、事業の規模や内容などを考慮して決定する必要があります。

経費計上できる?できない?判断の基準

経費計上できるかどうかを判断する上で最も重要な基準は、それが事業に関連しているかどうかです。つまり、その支出が事業の収入を得るため、または事業を維持するために必要かどうかがポイントとなります。

国税庁のホームページでは、「事業の収入を得るため、又は事業を維持するために直接必要な費用の額」とされています。

単に事業に役立つというだけでは不十分で、直接的な関連性が必要です。例えば、仕事で使うパソコンは経費計上できますが、趣味のゲーム機は経費になりません。たとえゲーム実況で収入を得ていたとしても、ゲーム機自体はその収入を得るための直接的な手段ではないからです。あくまで配信ソフトやPC周辺機器等が直接的な手段であり、ゲーム機は間接的な手段です。もしゲーム配信が副業で本業が別にあり、そのゲーム機を本業でも使用している場合は按分して一部を経費計上できる可能性があります。

個別の事案については税務署、税理士等に相談しましょう。

1. 事業関連性の判断基準

事業関連性を判断する上で、以下の3つのポイントを考慮すると良いでしょう。

ポイント説明
支出の目的何のために支出をしたのか?
  • 取引先との関係構築のため(接待交際費)
  • 業務効率化のため(パソコン購入費)
  • 知識・スキル向上のため(セミナー参加費)
支出の内容具体的に何に支出をしたのか?
  • 飲食代
  • 交通費
  • 書籍代
支出と事業の関連性支出が事業の収入にどのように繋がるのか?または、事業の維持にどのように役立つのか?
  • 新規顧客獲得
  • 業務時間の短縮
  • サービス品質の向上

2. 領収書の重要性

経費計上するためには、領収書などの証拠書類を保管しておくことが必須です。税務調査が入った際に、経費として認められるためには、支出の内容や日付、金額などを証明する必要があります。領収書がない場合は、経費として認められない可能性があります。

また、プライベートな支出と事業用の支出を明確に区別することも重要です。例えば、仕事で使う文房具とプライベートで使う文房具を同じ店でまとめて購入した場合、領収書には「文房具代」としか記載されないため、事業用とプライベート用の内訳がわかるようにメモを残しておくなど、工夫が必要です。クレジットカードや電子マネーを利用することで明細が残るため、領収書を保管する手間を省きつつプライベートとの区別を明確にすることができます。

経費計上できるものリスト2025年版

事業に直接関係する費用は、経費として計上できます。ただし、プライベートな費用との区別が重要です。以下は、経費計上できる代表的な項目です。個々の状況によって判断が異なる場合もありますので、不安な場合は税理士等に相談することをお勧めします。

1. 仕事で使うもの

1.1 パソコンやスマートフォン

業務に使用するパソコンやスマートフォン本体、周辺機器、ソフトウェア、アプリなどは経費計上できます。プライベートでも使用する場合、使用割合に応じて経費計上額を按分する必要があります。業務使用割合を明確な根拠に基づいて記録しておくことが大切です。例えば、業務使用が70%であれば、購入金額の70%を経費計上します。

1.2 事務用品

筆記用具、コピー用紙、ファイル、切手、印鑑など、業務に必要な事務用品は経費計上できます。領収書を保管し、何のために使用したかを記録しておきましょう

1.3 インターネット回線費用

業務に使用するインターネット回線費用は、使用割合に応じて経費計上できます。プライベートでも使用している場合は、パソコンやスマートフォンと同様に按分が必要です。契約内容や利用状況を記録しておきましょう

2. 移動にかかる費用

2.1 電車賃、バス代、タクシー代

業務で移動する際の電車賃、バス代、タクシー代は経費計上できます。乗車日、乗車区間、目的などを記録しておきましょう。SuicaやPASMOなどのICカードの利用明細も有効です。

2.2 自家用車を使った場合の費用

業務で自家用車を使用した場合、ガソリン代、駐車場代、高速道路料金、車検費用、自動車税、保険料などの一部を経費計上できます。業務使用割合に応じて按分し、走行距離や目的を記録した運行記録簿を作成することが重要です。プライベートで使用した分の費用は経費計上できません。

3. 仕事場に関する費用

3.1 家賃や光熱費(自宅兼事務所の場合)

自宅を事務所として使用している場合、家賃や光熱費の一部を経費計上できます。業務で使用している部屋の面積割合や使用時間に応じて按分する必要があり、明確な根拠に基づいて計算することが重要です。

3.2 コワーキングスペース利用料

業務でコワーキングスペースを利用した場合、その利用料を経費計上できます。契約書や利用明細などを保管しておきましょう

4. 自己研鑽のための費用

4.1 書籍代、セミナー参加費

業務に関連する書籍代やセミナー参加費は経費計上できます。書籍の内容やセミナーのテーマが業務にどのように関連しているかを明確にしておくことが重要です。趣味や教養を深めるための費用は経費計上できません。

4.2 資格取得のための費用

業務に関連する資格を取得するための費用(受験料、教材費、講習会費など)は経費計上できます。取得した資格がどのように業務に役立つのかを説明できるようにしておきましょう。プライベートな目的で取得した資格の費用は経費計上できません。

5. 交際費

5.1 会議費、接待飲食費

取引先との会議や接待にかかった飲食費、会場費などは交際費として経費計上できます。ただし、会議の目的や参加者、接待の相手や日時、場所、金額などを記録しておくことが必須です。プライベートな飲食費は経費計上できません。

5.2 贈答品代

取引先への贈答品代は、一定の限度額まで交際費として経費計上できます。贈答品の品名、金額、相手先などを記録しておきましょう。個人的な贈り物は経費計上できません。また、過剰な贈答は社会通念上問題となる可能性があります。

経費の基礎知識と判断基準 | まとめ

経費とは、事業を行う上で直接必要な支出であり、正しく理解し適切に管理することで税負担の軽減につながります。判断のポイントは「事業との直接的な関連性」「必要性」「妥当な金額」であるかどうか。領収書の保管や、プライベートとの明確な区分も非常に重要です。

迷った場合には税務署や税理士に相談しながら、ルールに則った経費計上を心がけましょう。日々の積み重ねが、将来の健全な経営に結びつきます。

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