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経費にできない支出・グレーゾーンの注意点

2025年5月15日

事業を営む個人事業主やフリーランスにとって、「何が経費として認められるか」を正しく理解することは、節税にも税務リスクの回避にも直結する非常に重要なポイントです。

しかし、実際には経費計上が認められない支出や、判断が難しい“グレーゾーン”の支出も数多く存在します。知らずに誤った経費処理をしてしまうと、税務調査で否認されたり、追徴課税を受けるリスクもあります。

この記事では、**「経費にできない支出の代表例」と「グレーゾーンに該当する支出の判断基準」**について、最新の情報をもとにわかりやすく解説します。あわせて、領収書の保管方法や紛失時の対応法についても紹介しますので、確定申告や日々の経理処理にぜひお役立てください。

経費計上できないものリスト

事業とは関係のない、純粋にプライベートな支出は経費計上できません。以下に代表的な例を挙げますが、これら以外にも事業に関係ないと判断されるものは経費として認められません。

1. プライベートな支出

個人の生活のために使った費用は、原則として経費計上できません。仕事とプライベートの線引きを明確にすることが重要です。

項目内容注意点
食費日々の食事代、外食費、飲み物代など仕事関係者との会食は交際費として計上できる場合がありますが、プライベートな食事は経費になりません。
被服費普段着、おしゃれ着、下着、靴など仕事でしか着用しない特別な制服や作業着などは経費計上できる場合があります。ただし、スーツやオフィスカジュアル程度の服装は、私服としても着用できるため、原則として経費計上は難しいでしょう。
趣味・娯楽費映画鑑賞、旅行、ゲーム、スポーツ、コンサート、ギャンブルなど趣味や娯楽のために使った費用は経費計上できません。たとえ仕事で疲れた体を癒すためであったとしても、プライベートな支出とみなされます。
家族旅行の費用家族旅行にかかった交通費、宿泊費、食費、入場料など家族旅行はプライベートな支出であり、経費計上はできません。仕事関係者が同行する場合でも、その部分が明確に区分できる場合を除き、原則として経費とは認められません。
習い事の費用趣味や教養を深めるための習い事の費用(例:英会話、ヨガ、料理教室など)仕事に直接関係ない習い事は経費計上できません。ただし、仕事に役立つ資格取得のための費用は、一定の条件を満たせば経費計上できる場合があります。

2. 罰金やペナルティ

法律違反や契約違反によって発生した罰金やペナルティは、経費計上できません。これらは事業とは関係のない支出とみなされます。

項目内容
交通違反の罰金スピード違反、駐車違反などによる罰金
延滞金税金や公共料金、クレジットカードなどの延滞金
損害賠償金事業とは関係のない損害賠償金(例:プライベートでの事故による賠償金)

上記のリストはあくまで一般的な例であり、個々の状況によって判断が異なる場合があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。国税庁

経費計上のグレーゾーン支出リスト2025年版|個人事業主・フリーランスが注意すべき点

経費計上できるもの、できないものは明確な基準がある一方で、判断が難しいグレーゾーンの支出も存在します。個人事業主やフリーランスにとって、これらのグレーゾーン支出への理解は、思わぬ税務トラブルを避ける上で重要です。ここでは、特に注意すべきグレーゾーン支出と、その適切な処理方法について解説します。

1. 家事関連費

水道光熱費や食費といった家事関連費は、原則としてプライベートな支出であり、経費計上はできません。しかし、自宅を事務所として使用している場合、仕事で使用している部分については経費計上できる場合があります。その場合、仕事で使用している割合を明確な根拠に基づいて計算し、按分して経費計上することが必要です。例えば、自宅の面積のうち仕事で使用している部分が20%であれば、水道光熱費の20%を経費として計上できます。この割合の算出根拠を明確にするために、間取り図などに仕事スペースを明示しておくことが重要です。

1.1 水道光熱費、食費の一部を経費計上する場合の注意点

水道光熱費や食費の一部を経費計上する場合、仕事に関連する部分とプライベートな部分を明確に区分する必要があります。曖昧な区分は税務調査で問題となる可能性があります。また、家事按分率の根拠を明確にし、領収書や計算資料などを保管しておくことが重要です。税務調査で経費計上の根拠を説明できるように準備しておきましょう。

2. 交際費

交際費は、仕事関係者との飲食や贈答品などにかかる費用です。仕事に関連する支出であることが明確であれば経費計上できますが、プライベートな支出との区別が難しいケースも多いため、注意が必要です。誰と、どのような目的で、どの程度の費用を使ったのかを具体的に記録し、領収書とともに保管しておくことが大切です。特に、高額な交際費や頻繁な交際費は、税務調査で厳しくチェックされる可能性があります。

2.1 どこまでが仕事関係と言えるのか?

仕事関係者との飲食や贈答であっても、それが事業に直接関係していることが客観的に認められる必要があります。例えば、新規顧客獲得のための接待や、取引先との関係維持のための会食などは、仕事関係と言えるでしょう。しかし、友人との食事や個人的な贈答品は、たとえ仕事の話が出たとしても、経費計上は認められません。誰と会ったのか、どのような話をしたのか、事業との関連性を明確に記録しておくことが重要です。

3. 被服費

被服費は、原則としてプライベートな支出であり経費計上はできません。しかし、特定の職業で必要とされる制服や作業着など、明らかに仕事のためにのみ使用する衣服は経費計上できる場合があります。スーツや私服は、仕事以外でも着用できるため、経費計上は難しいとされています。ただし、スーツを仕事でしか着用しないことを明確に証明できれば、経費計上できる可能性もゼロではありません。その場合、就業規則などで服装が規定されていることや、スーツ以外の私服を所有していないことなどを証明する必要があります。

3.1 スーツや作業着を経費計上できるケース

被服の種類経費計上できるケース注意点
制服、作業着仕事でしか着用しないことが明確な場合領収書を保管し、業務内容との関連性を説明できるようにする
スーツ仕事でしか着用しないことを客観的に証明できる場合(例:就業規則でスーツ着用が義務付けられている、私服を一切所有していないなど)証明が難しいケースが多く、税務調査で否認される可能性が高い

グレーゾーン支出の処理は、税務知識と適切な記録が重要です。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な経費処理を行い、スムーズな確定申告を目指しましょう。

領収書の保管方法と注意点

領収書は、経費計上を行う上で非常に重要な証拠書類です。適切に保管しておかないと、税務調査の際に経費として認められない可能性があります。また、電子帳簿保存法に対応した方法で保存することも重要です。ここでは、領収書の保管方法と注意点について詳しく解説します。

1. 領収書の保管方法

領収書の保管方法は、大きく分けて「紙での保管」と「電子データでの保管」の2種類があります。それぞれの特徴と注意点を見ていきましょう。

1.1 紙での保管

紙の領収書は、以下の点に注意して保管しましょう。

  • 領収書をクリアファイルやバインダーに整理して保管することで、紛失を防ぎ、必要な時にすぐに取り出せるようにします。日付や内容ごとに分類しておくと、さらに管理しやすくなります。
  • 高温多湿や直射日光を避けて保管することで、領収書の劣化を防ぎます。長期間保管が必要な書類ですので、適切な環境で保管しましょう。
  • 領収書にメモ書きを追加する場合、インクが消えないペンを使用することが大切です。鉛筆や消せるボールペンで書いたメモは、時間が経つと消えてしまう可能性があります。また、修正液の使用も避けましょう。

1.2 電子データでの保管

電子データでの領収書保管は、スキャナやスマートフォンアプリを使って領収書をデータ化する方法です。電子帳簿保存法に対応した方法で保存する必要があります。

  • スキャナ保存:スキャナを使って領収書をPDFなどの形式で保存する方法です。解像度やファイル形式など、電子帳簿保存法の要件を満たすように設定する必要があります。
  • スマートフォンアプリを利用した保存:freeeやマネーフォワード クラウドなどの会計ソフトと連携できるアプリを利用することで、領収書を撮影して簡単にデータ化できます。これらのアプリは電子帳簿保存法に対応しているため、安心して利用できます。

電子保存する場合、データが消失しないように定期的にバックアップを取ることが重要です。外付けハードディスクやクラウドストレージなどを活用しましょう。また、データの改ざんを防ぐための対策も必要です。タイムスタンプの付与などが有効です。

2. 領収書の保管期間

領収書の保管期間は、原則として7年間です。法人税法と所得税法で定められています。ただし、欠損金が生じた場合などは、最長10年間の保管が必要となるケースもあります

3. 領収書がない場合の対処法

領収書を紛失した場合でも、経費として認められる可能性はあります。ただし、出金伝票やクレジットカードの利用明細、銀行の振込明細書など、支出を証明できる代替資料が必要です。これらの資料に、取引日付、取引先、金額、内容などが明確に記載されている必要があります。

代替資料内容
出金伝票現金で支払った場合に作成する伝票
クレジットカードの利用明細書クレジットカードで支払った場合の明細
銀行の振込明細書銀行振込で支払った場合の明細

これらの代替資料を保管しておき、領収書の代わりとして税務署に提出できるようにしておきましょう。また、取引の内容をメモに残しておくことも有効です。いつ、どこで、誰と、何のために支出をしたのかを記録しておきましょう。

経費にできない支出・グレーゾーンの注意点 | まとめ

経費に計上できるか否かの判断は、「事業との関連性が明確かどうか」が最も重要なポイントです。

明らかにプライベートな支出はもちろん、グレーゾーンに該当する支出であっても、使途の記録や領収書の保管、按分計算の根拠などをしっかり整えておくことで、正しく経費処理することが可能になります。

また、税制は年々変化しているため、最新の情報を把握し、判断に迷う場合は税理士などの専門家に相談するのが賢明です。

この記事を参考に、無駄な税務リスクを回避しながら、事業経営をより健全に進めていきましょう。

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