記事

選ばれる理由は「専門性」より「人間性」

2025年6月9日

「技術は確かだと思うのに、なぜかリピートされない」
「どれだけ資格を取っても、なぜか信頼につながらない」
「他と差別化しようと努力しているのに、選ばれない」

このような声は、士業・医療・コンサル・教育・デザインなど、「専門性」が重要視される業界でよく聞かれます。もちろん、知識やスキルはビジネスを成立させるうえで必要不可欠です。しかし、現代において“それだけ”では選ばれにくい時代になってきました。

では、いま本当に求められているのは何か?
その答えは――「人間性」です。

今回は、なぜ「人間性」が選ばれる最大の理由となるのか、そして専門職が“人間味”をどう伝えるべきかについて、深掘りしていきます。

専門性の価値は「当たり前」になっている

かつては、「資格を持っている」「技術に秀でている」ことが、そのまま信頼や価値につながっていました。しかし、情報のオープン化と競合の増加により、今や専門性は“持っていて当然”の土台になっています。

たとえば整体院でも、どの院も国家資格保持者で、施術内容もホームページ上は似通っています。弁護士や税理士でも、基本的な法知識や申告作業に差はほとんどなく、顧客側から見れば“違いが分かりづらい”のが実情です。

つまり、専門性だけでは「比較対象」に埋もれてしまうのです。

人が人を選ぶ時代へ

では、顧客は何を基準に選ぶのか?
それは「この人になら任せられる」「この人となら一緒に頑張れそう」という、感情ベースの信頼関係です。

・「この先生は話をしっかり聞いてくれる」
・「専門用語を噛み砕いて説明してくれる姿勢が嬉しい」
・「なんだか相性が良さそうだから頼りたい」

こういった判断は、専門知識ではなく“人柄”から生まれます。

特にサービスが“無形”であるほど、信頼は「人」に紐づきます。つまり、人間性を伝えることは、最高のブランディングなのです。

人間性は“見せる”ものではなく、“にじみ出る”もの

「じゃあ、どうやって人間性をアピールすればいいの?」そう思った方もいるでしょう。

人間性とは、決して“演出”するものではありません。むしろ日常の言動や関わりの中で、にじみ出ていくものです。

たとえば:

・SNSで専門知識だけでなく、日々感じたことを素直に投稿する
・お客様に「正しい答え」ではなく、「その人にとって一番良い提案」を届ける
・初対面の人にも、肩肘張らずに接する

こうした日常のふるまいが積み重なった結果、「この人は信頼できる」「この人から買いたい」と感じてもらえるのです。

専門性は「信用」、人間性は「信頼」

ここで一つ、重要な区別をしておきたい言葉があります。

・信用(Credit):過去の実績や資格に基づく、論理的な安心感
・信頼(Trust):その人の人柄や姿勢から生まれる、感情的な安心感

専門性がもたらすのは“信用”です。これがなければ土俵にすら立てません。しかし、最終的に「この人と仕事をしたい」「この人に身体を預けたい」と思わせるのは、“信頼”の力です。

そして、信頼は人間性の表現からしか生まれません。

選ばれるために必要なのは、「完璧さ」ではなく「親近感」

人間性を伝えると聞くと、「好印象を持たれないと」「失敗してはいけない」と身構えてしまう人も多いですが、実際には逆です。

むしろ、完璧すぎる人は、共感されにくい。

・少し不器用でも、一生懸命な姿
・難しい話を、例え話でわかりやすく伝えようとする誠実さ
・失敗談や苦労話を笑って語れる余裕

こういった“人間くささ”が、信頼を呼びます。顧客やクライアントは、「この人も自分と同じように悩んで成長してきたんだな」と思える人に親近感を抱くのです。

“選ばれる専門家”が実践していること

最後に、実際に人間性をうまく活かしてブランディングしている専門家に共通する行動パターンを挙げてみます。

  1. 等身大の自分を発信する
    →SNSやブログで、失敗談や日常の気づきを自然体でシェア。
  2. 言葉に“温度”を込める
    →メールやDMでも「お大事にしてください」「応援しています」といった心遣いの一言がある。
  3. 相手の話を聴く姿勢を持つ
    →専門知識でマウントを取らず、まず相手の言葉に耳を傾ける。
  4. 「売る」より「寄り添う」を意識する
    →無理な営業はせず、長期的な関係性を大切にしている。

「専門性」より「人間性」| まとめ

これからの時代、技術や知識の差は縮まっていきます。でも、「人間性」には二つと同じものがありません。だからこそ、唯一無二の差別化ポイントになり得るのです。

完璧である必要はありません。正しいことを並べる必要もありません。あなたの言葉で、あなたの思いで、目の前の人に向き合うこと。

それが、選ばれるための一番の近道です。

“あなた”という存在こそが、最大のブランドになる――

そのことに気づいた瞬間から、ビジネスは変わり始めます。

-記事