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数字が苦手な経営者のための“感覚的会計術”

2025年10月23日

「経理の数字を見ると頭が痛くなる」「利益が出ているのか、感覚ではわかるけど説明できない」
——そんな経営者は、実はとても多いです。

会計や財務と聞くと、どうしても「専門家が扱うもの」という印象があり、苦手意識を持ってしまう人が少なくありません。

しかし、経営とは数字と切り離せないもの。

売上、経費、利益、キャッシュフロー……。

数字を読めないままでは、せっかくの努力も「なんとなく黒字、なんとなく不安」のままになってしまいます。

とはいえ、全てを簿記的に理解しようとする必要もありません。むしろ中小企業や個人事業主にとって大切なのは、「感覚的に数字をつかむ力」。

今日は、数字が苦手な経営者でも実践できる“感覚的会計術”について解説します。

経営者のための“感覚的会計術”

「数字を読む」ではなく「数字を感じる」

まず大切なのは、会計を「勉強」ではなく「感覚の延長」として捉えること。

経営者の中には、「数字=計算」と思い込んでいる人が多いですが、実際には“数字の意味”を掴めれば十分です。
たとえば、以下のような感覚でOKです。

売上が上がっても現金が減っている → 支払いが先行している

経費の中で「固定費」が増えている → 事業の身軽さが失われつつある

仕入れが増えている → 売上の伸びを先取りしている or 在庫が溜まっている

このように、数字は感覚を裏づけるツールと捉えれば、一気に理解が進みます。
つまり、「会計を読む」のではなく「数字を感じる」。
“数字で感じ取る経営感覚”こそ、数字が苦手な人に必要な発想です。

会計を「三つの箱」で捉える

複雑に見える会計も、実は「お金の流れ」を三つの箱で考えるとシンプルになります。

  1. 入ってくるお金(売上)
  2. 出ていくお金(経費・支出)
  3. 残るお金(利益・現金)

この3つのバランスを感覚的に把握していれば、細かい会計知識がなくても経営判断はできます。

たとえば、
「売上は上がっているのに現金が増えていない」
この場合、「入るスピード」と「出るスピード」にズレがある。つまり、キャッシュフローが悪化している可能性があります。

反対に、
「売上は横ばいでも現金が増えている」
ならば、支出の管理が上手くいっているサインです。

経営とは、この3つの箱のバランスを調整し続けること。
数字を追うのではなく、「箱の中の水の動き」を感じ取るようにすれば、自然と会計感覚が身につきます。

「月に一度の数字ミーティング」を習慣化する

数字が苦手な経営者ほど、“定期的に数字に触れるリズム”を持つことが重要です。

おすすめは、月に一度だけでも数字と向き合う時間を設けること。
内容は難しくなくて構いません。

たとえば次の3点をチェックするだけでも十分です。

今月の売上はいくらだったか?(前月比+前年比)

今月の経費はどこに多く使ったか?

現金残高はどれくらいあるか?

この3つを「体感で理解」していけば、数字が自然と自分の言葉になります。

大切なのは、数字を見ることを“儀式化”することです。
最初は苦手でも、毎月続けていれば、“感覚的会計脳”が育っていきます。

「売上」よりも「粗利」を意識する

数字に苦手な人が最も誤解しやすいのが、「売上が多い=儲かっている」という考え方。
実際には、売上が増えても経費が増えれば利益は減ります。

経営において注目すべきは、**「粗利(売上-原価)」**です。
粗利は、あなたのビジネスが「どれだけ価値を生んでいるか」を示す数字。

たとえば、同じ100万円の売上でも、

原価が80万円なら粗利は20万円(利益率20%)

原価が40万円なら粗利は60万円(利益率60%)

この差は「価格設定」や「仕入れの工夫」で生まれます。
つまり、数字が苦手でも、**「利益率を感覚で把握する」**ことが最も重要です。

会計は“未来の地図”として使う

多くの人が会計を「過去の記録」として扱います。
しかし、本来の会計は「未来を描くための地図」です。

数字が苦手な経営者でも、

どの事業が利益を出しているか

どの活動がコストばかりかかっているかを感覚的に理解できれば、次の一手を決める指針になります。

数字を見る目的は「反省」ではなく、「未来の選択肢を増やすこと」。数字を“怖い記録”ではなく、“頼れるコンパス”として扱うことが、感覚的会計の真髄です。

数字は「感情の裏づけ」である

最後に強調したいのは、数字とは“感情の翻訳”であるということ。

たとえば、
「最近忙しいけど、なぜかお金が残らない」
「頑張っているのに結果が出ない」
こうしたモヤモヤを、数字が客観的に説明してくれます。

逆に、
「この価格設定なら気持ちよく売れる」
「この人に支払うお金は惜しくない」
と感じるときも、数字で裏づけることで自信を持って判断できます。

数字を避けるのではなく、数字と感情をつなぐ。これが、“感覚的会計術”の最大の目的です。

経営者のための“感覚的会計術” | まとめ

経営者にとって、数字は「敵」ではなく「鏡」です。

そこにはあなたの意思決定の結果と、ビジネスの健康状態が映し出されています。

数字が苦手でも大丈夫。必要なのは、完璧な知識ではなく、自分なりの“感じ取る習慣”です。

・数字を勉強ではなく感覚で捉える
・月に一度、数字に触れる時間をつくる
・売上ではなく粗利を感じ取る
・会計を未来の羅針盤として使う

この4つを意識するだけで、数字との距離はぐっと縮まります。

“感覚で経営する”ことは決して悪いことではありません。

むしろ、その感覚を数字で裏づけられる経営者こそ、これからの時代に最も強い存在なのです。

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