近頃、ニュースでも騒がれていますが、スーパーやネット通販でお米が非常に高騰しています。
かつては「米余り」が問題視されていた日本で、なぜ今、米の価格が上昇しているのでしょうか?
その背景には、天候やコストの問題だけでなく、農業の構造的課題など、さまざまな要因が関係しています。
本記事では日本の農業が抱える課題について解説します。
日本の農業が抱える深刻な課題
日本の農業は、様々な課題に直面しており、その深刻度は年々増しています。
これらの課題を解決しない限り、日本の食料安全保障は揺らぎかねません。
主要な課題として、農業従事者の減少と高齢化、気候変動の影響、生産性の低下、そして後継者不足が挙げられます。
1. 農業従事者の減少と高齢化
日本の農業従事者数は減少の一途を辿っています。高齢化も深刻で、65歳以上の農業従事者の割合が増加し続けています。若い世代の農業への参入が少ないため、この傾向は今後も続くことが懸念されています。農業従事者の減少と高齢化は、農業の担い手不足に直結し、日本の農業の持続可能性を脅かす大きな問題となっています。
年度 | 農業従事者数(万人) | 65歳以上の割合(%) |
---|---|---|
2010年 | 260 | 58.4 |
2015年 | 209 | 63.1 |
2020年 | 166 | 66.8 |
2. 気候変動の影響
地球温暖化による異常気象の増加は、農作物の生育に大きな影響を与えています。干ばつ、豪雨、台風などの自然災害は、農作物の収量減少や品質低下を引き起こし、農業経営に深刻な打撃を与えています。また、気温上昇は病害虫の発生リスクを高め、農作物の生育に悪影響を及ぼす可能性も懸念されています。
近年では、夏季の高温によるコメの品質低下や、病害虫の発生範囲の拡大などが報告されています。また、リンゴやブドウなどの果樹栽培においても、着色不良や成熟期の変化といった影響が見られています。気候変動への適応策が急務となっています。
3. 生産性の低下
日本の農業生産性は、諸外国と比較して低い水準にとどまっています。規模の小ささや、高齢化による労働力不足、そして技術導入の遅れなどが生産性低下の要因として指摘されています。国際競争力の強化のためには、生産性の向上は不可欠です。
例えば、主要農産物であるコメの10アール当たり収量は、アメリカやオーストラリアと比べて低いのが現状です。生産性向上のためには、規模拡大やスマート農業の導入など、様々な取り組みが必要とされています。
4. 後継者不足
農業従事者の高齢化が進む一方で、後継者不足は深刻な問題となっています。若い世代の農業への関心が薄く、農業を魅力的な職業として捉える人が少ないことが、後継者不足の大きな要因です。後継者不足は、農業の持続可能性を脅かすだけでなく、地域の活性化にも悪影響を及ぼします。
後継者を確保するためには、農業の収益性向上や労働環境の改善、そして農業の魅力を発信していくことが重要です。
また、新規就農者への支援体制の強化も必要不可欠です。
日本の農業が抱える深刻な課題 | まとめ
かつては「米余り」が問題視されていた日本で、現在は米の価格が高騰し、供給不安さえ生じています。その背景には、農業従事者の減少と高齢化、気候変動、生産性の低下、後継者不足といった、長年蓄積された日本農業の構造的課題が存在します。
これらの課題は、日本の食料安全保障にも直結する深刻な問題です。持続可能な農業の実現に向けては、若手の参入促進やスマート農業の導入、収益性と労働環境の改善など、包括的な取り組みが不可欠です。
今こそ、農業を未来につなぐための本質的な改革が求められています。