マイクロ法人とは?

「マイクロ法人」という言葉を聞いたことはありますか?

近年、注目を集めているこの形態は、個人事業主と株式会社のメリットを併せ持つ、新しい働き方として期待されています。しかし、メリットだけでなくデメリットも存在し、設立や運営には一定の知識が必要です。

この記事では、マイクロ法人とは何かという基本的な定義から、メリット・デメリット等について詳しく解説します。

 

マイクロ法人とは

マイクロ法人とは、資本金1円から設立できる株式会社または合同会社を指す俗称です。法律で正式に定義された用語ではなく、一般的に従業員数が少なく、小規模な事業を営む法人を指します。

近年、起業のハードルが下がり、個人事業主から法人成りするケースが増加する中で、注目を集めています。

 マイクロ法人の定義

明確な法的定義はありませんが、一般的には以下の特徴を持つ法人をマイクロ法人と呼びます。

  • 従業員数が少ない(1人〜数名程度)
  • 資本金が少額(1円〜数百万円程度)
  • 小規模な事業を営む

これらの特徴に加え、役員と従業員が同一人物であることも多いです。少人数で事業を運営するため、意思決定のスピードが速く、柔軟な対応が可能というメリットがあります。

マイクロ法人と中小企業の違い

中小企業基本法では、中小企業の範囲を業種ごとに資本金または従業員数で定めています。例えば、製造業・建設業・運輸業などは資本金3億円以下または従業員数300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員数100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員数50人以下、サービス業などは資本金5,000万円以下または従業員数100人以下とされています。

マイクロ法人は、これらの基準に照らし合わせると、ほとんどの場合、中小企業に該当します。つまり、マイクロ法人は中小企業の一種と言えるでしょう。

ただし、すべてのマイクロ法人が中小企業に該当するとは限りません。例えば、資本金3億円を超える大企業の子会社などがマイクロ法人として設立されるケースも考えられます。

項目マイクロ法人中小企業
定義明確な法的定義なし(一般的に小規模な法人)中小企業基本法で定義
規模非常に小規模小規模〜中規模
従業員数少ない(1人〜数名程度)業種による
資本金少額(1円〜数百万円程度)業種による

マイクロ法人と個人事業主の違い

マイクロ法人と個人事業主の大きな違いは、法人格の有無です。マイクロ法人は法人格を持つため、会社として契約を結んだり、財産を所有したりすることができます。

一方、個人事業主は個人で事業を行うため、事業と個人の財産が区別されません。この違いは、責任の範囲、税金、社会的な信用力などに影響を与えます。

項目マイクロ法人個人事業主
法人格ありなし
責任有限責任無限責任
税金法人税等所得税等
社会的な信用力比較的高い比較的低い

これらの違いを理解した上で、自身の事業に最適な形態を選択することが重要です。国税庁:所得税について

マイクロ法人のメリット

マイクロ法人は、個人事業主と比較して様々なメリットがあります。大きく分けると、節税メリット社会的な信用力の向上資金調達の優位性の3つが挙げられます。

節税メリット

マイクロ法人では、個人事業主と比べて様々な節税対策を行うことができます。例えば、給与所得控除を利用することで、所得税の負担を軽減できます。また、法人化した場合、事業で得た利益を会社に留保することができ、個人の所得税を圧縮できます。さらに、経費の範囲も個人事業主よりも広がるため、節税効果が高まります。ただし、法人化には一定のコストがかかるため、事業規模や収入によっては節税効果が薄れる場合もあります。具体的な節税方法は後述の「マイクロ法人と節税」の章で詳しく解説します。

社会的な信用力の向上

個人事業主の場合、取引先から事業の安定性や信頼性に不安を抱かれるケースがあります。一方、法人化することで、「株式会社」や「合同会社」といった名称を使用できるようになり、対外的な信用力が向上します。特に、金融機関からの融資を受ける際や、大企業との取引を開始する際には、法人格を持つことが有利に働くことが多いです。また、名刺に「代表取締役」といった肩書きを記載することで、ビジネスにおける信頼感や責任感をアピールできます。

資金調達の優位性

マイクロ法人になると、個人事業主よりも資金調達が容易になります。金融機関は、法人に対しては事業計画や財務状況を審査した上で融資を行うため、融資額が大きくなりやすい傾向があります。また、ベンチャーキャピタルからの出資を受けやすくなる点もメリットです。資金調達の選択肢が広がることで、事業拡大の機会も増えます。特に、設備投資や人材採用など、まとまった資金が必要な事業を展開する場合には、法人化のメリットが大きくなります。

資金調達方法個人事業主マイクロ法人
銀行融資審査が厳しく、融資額が少ない傾向審査が比較的緩やかで、融資額が大きい傾向
日本政策金融公庫利用可能だが、限度額が低い場合も利用可能で、法人向け融資制度も活用できる
ベンチャーキャピタル出資を受けるのが難しい出資を受ける可能性がある
クラウドファンディング個人でも利用可能法人として信頼性を高められる

マイクロ法人のデメリット

マイクロ法人には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。設立前にしっかりと理解しておくことが重要です。安易に設立してしまうと思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。デメリットを理解した上で、自身にとってマイクロ法人が最適な選択肢かどうかを慎重に検討しましょう。

設立・運営コスト

マイクロ法人設立には、定款認証費用や登録免許税などの初期費用がかかります。また、設立後もランニングコストとして、社会保険料や税理士報酬、会計ソフト利用料などが発生します。

個人事業主と比較すると、これらのコストは増加する傾向にあります。コスト増加による負担増をしっかりと認識しておく必要があります。

具体的な設立費用としては、定款認証費用、登録免許税、印紙代などが挙げられます。ランニングコストとしては、社会保険料、税理士報酬、会計ソフト利用料、オフィス賃料、消耗品費などが挙げられます。

これらの費用は、事業規模や内容によって大きく変動するため、事前にしっかりと見積もりを作成することが重要です。

社会保険への加入義務

マイクロ法人では、従業員を雇用していない場合でも、代表取締役は社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する義務があります。これにより、個人事業主の場合と比較して、社会保険料の負担が増加します。

社会保険料の増加は、固定費の増加に直結するため、経営を圧迫する可能性があります。

保険個人事業主マイクロ法人(代表取締役)
健康保険国民健康保険協会けんぽ、健康保険組合など
厚生年金保険国民年金厚生年金

社会保険への加入義務に関する詳細は、日本年金機構のウェブサイトをご確認ください。

会計処理の複雑化

マイクロ法人では、個人事業主と比較して会計処理が複雑になります。複式簿記による記帳、決算書の作成、法人税の申告などが必要となり、専門的な知識が必要となるケースも少なくありません。

会計処理に不慣れな場合、税理士に依頼する必要が生じ、さらなるコスト増加につながる可能性があります。

会計ソフトの活用

会計処理の負担を軽減するために、会計ソフトの活用が有効です。freeeやマネーフォワードクラウド会計など、様々な会計ソフトが提供されています。

これらのソフトを利用することで、効率的に会計処理を行うことができます。ただし、会計ソフトを使いこなすためには、ある程度の学習が必要となる場合もあります。

税理士への依頼

会計処理に自信がない場合や、時間的な余裕がない場合は、税理士に依頼することを検討しましょう。税理士に依頼することで、正確な会計処理と節税対策を期待できます。

ただし、税理士への報酬が発生するため、コストとのバランスを考える必要があります。

 

マイクロ法人とは | まとめ

本記事ではマイクロ法人について、その定義からメリット・デメリットについて解説しました。

マイクロ法人は、1人または少人数で運営する小規模な株式会社であり、個人事業主と比べて社会的な信用力が高く、資金調達もしやすいというメリットがあります。また、適切な経営を行うことで節税効果も期待できます。

一方で、設立・運営コストや社会保険への加入義務、会計処理の複雑化といったデメリットも存在します。

現在個人事業主としては活動されている人は、メリットでデメリットをしっかり検討した上で法人を設立することをおすすめします。

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