「何をして起業すればいいかわからない」「自分には売れるスキルがない」――。
そんな不安や迷いを抱える人は少なくありません。特に副業やスモールビジネス、独立といった言葉が身近になった今、自分で何かを始めたいと思いつつも、“ゼロから何かを生み出さなきゃ”と構えてしまう人が多いのです。
しかし実は、起業や副業を考えるとき、いちばん初めにすべきことは「新しいスキルを学ぶこと」ではありません。
必要なのは、“あなたの過去を振り返ること”。
つまり、「経験の棚卸し」です。
この記事では、「経験の棚卸し」がなぜ起業の第一歩として有効なのか、どうやって実践すればよいのか、そしてそこからどんな可能性が広がるのかについて、具体的に解説していきます。
起業とは“ゼロからの挑戦”ではなく、“過去の再発見”
起業と聞くと、「新しいサービスを考える」「差別化できるビジネスモデルを作る」など、斬新なアイデアや専門的な知識が必要と思われがちです。
でも、実際に成果を出している個人起業家の多くは、自分の過去にある“経験”や“得意なこと”をベースにビジネスを構築しています。
たとえば:
・育児での苦労や工夫 → ママ向けの講座や情報発信に
・会社で長年やっていた事務作業 → 中小企業向けの業務サポートに
・趣味で続けてきたDIYや料理 → SNSを活用した集客と販売に
つまり、ゼロから何かを生み出すのではなく、すでに持っているものに価値を見出すことが、起業の入口としてとても大切なのです。
なぜ「棚卸し」が効果的なのか?
私たちは、自分の過去や日常にあまりにも慣れてしまっていて、「こんなことに価値があるなんて思わなかった」というものをたくさん抱えています。
でも他人にとっては、それが“役に立つ情報”であり、“求めている答え”であることも多いのです。
たとえば:
・「ただの営業経験」と思っていたことが、「営業が苦手な人向けのコンサル」になる
・「日々こなしていた育児」が、「ワンオペ育児に悩む人の励ましの言葉」になる
・「自分では普通にやっている家計管理」が、「貯金に悩む人にとっての学び」になる
このように、自分にとっての“当たり前”は、誰かにとっての“価値”になる。その可能性を見つけ出すのが、「経験の棚卸し」の目的です。
棚卸しのステップ:自分の“価値の種”を掘り出す方法
では、具体的にどうやって棚卸しをすればよいのでしょうか。以下の4ステップで、自分の中にある“ビジネスの種”を発見することができます。
ステップ①:経験を書き出す
まずは、これまでの経験をすべて書き出してみましょう。仕事、趣味、家庭、学校生活、挫折体験など、どんな小さなことでも構いません。
例:
・大学時代に続けていたブログ
・子育て中に実践した時短レシピ
・前職での新人教育やマニュアル作り
・人前で話すことが得意、苦手克服した経験
ステップ②:「好き」「得意」「感謝されたこと」をピックアップ
書き出した経験の中から、「楽しかった」「やりがいを感じた」「人に感謝された」ものを印に残します。ここには、ビジネスの原石が眠っている可能性が高いです。
人は、自分の“情熱”や“自然にできること”を軸にすると、継続できるし、他者にも伝わりやすいのです。
ステップ③:「誰に、どう役立てるか」を考える
選んだ経験が、誰のどんな悩みに応えられるかを考えてみましょう。
「誰のために」「何を提供できるか」を明確にすることで、サービスや商品として形にしやすくなります。
たとえば:
・新人教育の経験 → 新入社員向けの社会人マナー講座
・家計管理 → 20代女性向けの“貯金体質”ワークショップ
・接客経験 → 小さな店舗のスタッフ育成サポート
ステップ④:発信・行動を始める
棚卸しで見つけた“価値の種”をもとに、小さく発信を始めてみましょう。SNS、ブログ、友人との会話……どんな形でもいいので、「こんなことを考えている」「こういうサポートができます」とアウトプットすることで、反応が返ってきます。
最初は売上や依頼がなくても、声に出すことで応援者が増えたり、ニーズが見えたり、方向性が洗練されていきます。
「あなたに頼みたい」は、過去からつくられる
起業とは、商品やサービスを通じて「誰かの役に立つこと」。
そして、信頼を築き「この人に頼みたい」と思ってもらうには、“あなたがどんな人で、どんな経験をしてきたか”がとても大きな要素になります。
つまり、あなたの人となり=これまでの歩みそのものが、最大のビジネス資産なのです。
「実績がないから無理」ではありません。むしろ、過去のどんな経験も、その切り取り方次第で価値に変えることができます。
“経験の棚卸し”から始める起業術 | まとめ
人は誰しも、独自の経験を持っています。
それは資格よりも、肩書きよりも、はるかに深い“説得力”を持つものです。
「何かを始めたいけど、何ができるかわからない」そんなときこそ、自分の過去を見つめてください。
あなたが歩いてきた道には、すでに誰かのためになる“ヒント”が詰まっています。
その点をつなぎ、意味づけしていくこと――それが、「あなたにしかできない起業」の出発点になります。
まずは、経験の棚卸しから。
あなたの過去に、必ず価値があるのです。