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“固定費恐怖症”を乗り越えるお金の考え方

2025年10月31日

多くの経営者が抱える悩みのひとつに「固定費のプレッシャー」があります。

家賃、人件費、システム利用料、広告費など、毎月必ず出ていくお金を見て「これだけ支出があるのに、本当にやっていけるのか?」と不安を感じたことのある人は多いでしょう。

特に小規模事業や個人経営では、「固定費=リスク」と捉え、極限までコストを削減しようとする傾向があります。

しかし実は、この“固定費恐怖症”こそが、事業の成長を止めてしまう最大の要因でもあるのです。

“固定費恐怖症”を乗り越えるお金の考え方

「固定費=悪」ではない

固定費を悪と考えるのは、家計簿的な発想に基づいています。

たしかに、個人の家計であれば「支出を減らす=貯金が増える」ですから、コスト削減が正解です。

しかし、事業経営においては「お金は使うことでリターンを生む」という構造になっています。

つまり、固定費を“減らす”ことが目的になってしまうと、成長のための投資機会を失うのです。

たとえば、スタッフを雇うことも固定費ですが、それによって自分の時間が生まれ、売上アップにつながる施策に集中できるなら、それは「支出」ではなく「投資」です。

また、ホームページの維持費や広告費も、顧客との接点を作るための“生きたコスト”です。

本当に危険なのは、固定費そのものではなく、「固定費を怖がって、必要な投資まで止めてしまうこと」なのです。

 “固定費恐怖症”の正体は「見通しのなさ」

では、なぜ経営者は固定費を恐れてしまうのか?

その理由はシンプルで、「お金の流れが見えていない」からです。

今月の支出がどれくらいで、来月の入金がどれくらいなのか。

3か月後にキャッシュがどれくらい残るのか。

これを“感覚”ではなく“数字”で把握できていないと、固定費は常に不安の種になります。

逆に言えば、未来のキャッシュフローが見えていれば、不安はかなり軽減されます。

たとえ今月赤字でも、「来月には契約が入る」「半年後には黒字転換できる」という見通しが立っていれば、固定費を前向きに捉えることができるのです。

だからこそ、経営者に必要なのは“節約思考”ではなく、“予測思考”です。毎月の支出と入金のサイクルを把握し、3か月先、半年先のキャッシュ残高を予測する。

この「お金の地図」を持つことが、固定費恐怖症を克服する第一歩になります。

 “余裕資金”ではなく、“攻めの資金”を

多くの経営者は「とりあえず貯めておこう」という発想で資金を守りたがります。

もちろん、手元資金の確保は重要です。ですが、常に“守り”に入っていては事業は伸びません。

固定費を「リスク」と見るのではなく、「攻めのためのコスト」として捉えることが大切です。
たとえば、

オフィスを少し広くして、スタッフの生産性を上げる
広告を強化して、より多くの顧客と出会う
外注費を使って、自分がしかできない仕事に集中する
これらはすべて“固定費アップ”に見えますが、実際には“売上を生み出す装置への投資”です。

経営とは、単にお金を減らさないことではなく、「お金をどう循環させるか」のゲームです。

固定費を最小限に抑えすぎて、循環が止まってしまえば、売上も止まります。

「回収のシナリオ」を持てば、固定費は怖くない

固定費を増やすときに重要なのは、「どう回収するか」というシナリオを明確に描くことです。

たとえば、新しい人材を雇うなら「その人がどのタイミングで利益を生み出すのか」。

新しいツールを導入するなら「どれくらい業務効率が上がるのか」。

それを“数値化”しておくことで、固定費は「怖い支出」ではなく「計画的な投資」に変わります。

さらに、この“回収シナリオ”を月単位で検証し続けることが、経営の安定化を生みます。「思ったより成果が出ない」と感じたら、その固定費の使い方を見直す。

逆に「十分なリターンがある」なら、さらに投資を強化する。こうした「固定費のPDCA」を回せる経営者は、不況でも強いのです。

恐怖ではなく、戦略として“固定費”を使う

結局のところ、固定費は“悪”でも“善”でもありません。それをどう設計し、どう回収していくかという「戦略の問題」です。

恐れて削る経営から、戦略的に活かす経営へ。

「この固定費は、未来の利益を生む仕組みを作るためのコストだ」と考えられるようになったとき、経営者の視界は一気にクリアになります。

固定費恐怖症を乗り越えるとは、単に支出を恐れなくなることではありません。お金に対して“主体的に向き合える自分”になること。

それこそが、経営者としての本当の成長であり、次のステージに進むための鍵なのです。

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