近年、多くの企業が頭を悩ませているのが早期離職の問題です。優秀な人材の確保が困難な状況において、せっかく採用した人材が早期に離職してしまうことは、企業にとって大きな損失となります。
離職率の上昇は企業の成長を阻害するだけでなく、企業文化の醸成や組織力の低下にもつながる可能性があります。
本記事では、早期離職の現状について、統計データなどを交えながら詳しく解説していきます。
1. 早期離職の現状
1.1 離職率の推移と人材不足の深刻化
厚生労働省の調査によると、近年、日本の労働市場における離職率は上昇傾向にあります。令和4年雇用動向調査結果の概況によると、令和4年の入職率は16.3%、離職率は15.0%となっています。特に若年層の離職率が高く、企業の人材不足に拍車をかけています。この人材不足は、企業の事業活動に深刻な影響を与えており、経済成長の足かせとなる可能性も懸念されています。
項目 | 令和3年 | 令和4年 |
---|---|---|
入職率 | 15.5% | 16.3% |
離職率 | 14.3% | 15.0% |
1.2 早期離職が企業に与える影響
早期離職は、企業にとって様々な悪影響を及ぼします。まず、採用・教育コストの損失が挙げられます。採用活動には、求人広告の掲載費用や面接官の人件費など、多額のコストがかかります。また、新入社員の教育にも時間と費用が必要です。早期離職によってこれらの投資が無駄になってしまうことは、企業にとって大きな痛手となります。さらに、早期離職が続くと、企業のノウハウや技術が蓄積されにくくなり、組織力の低下につながります。また、残された社員の負担が増加し、モチベーションの低下やさらなる離職を招く可能性も懸念されます。企業イメージの低下も無視できません。早期離職が多い企業は、労働環境が悪い、社員を大切にしないといったネガティブなイメージを持たれやすく、優秀な人材の確保がさらに難しくなる可能性があります。
早期離職の発生による企業側の損失として「採用費用の損失」が最も多く、次いで「教育費用の損失」「欠員による業務への支障」が上位を占めています。
2. 早期離職の実態 入社何年で辞める?
早期離職は、企業にとって大きな損失であり、人材不足の深刻化にもつながる重要な問題です。厚生労働省の調査によると、新規学卒者の離職率は高く、入社後数年以内での離職が顕著に見られます。また、中途採用者においても早期離職は発生しており、企業はそれぞれの状況に合わせた対策を講じる必要があります。
2.1 入社1年未満での離職
入社1年未満での離職は、企業にとって特に大きな痛手となります。採用にかかったコストが回収できず、業務の引継ぎも不十分なまま退職に至るケースが多く、組織全体の生産性低下につながる可能性があります。早期離職の原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。
2.1.1 新卒の早期離職の要因
新卒の早期離職の要因は様々ですが、主なものとして、仕事内容と入社前のイメージとのギャップ、職場環境への不適応、人間関係の構築の難しさなどが挙げられます。特に、近年は労働環境や待遇面に関する情報が容易に入手できるようになったため、入社後にギャップを感じて早期に離職を選択する新卒社員も少なくありません。
2.1.2 中途採用の早期離職の要因
中途採用の早期離職の要因としては、仕事内容のミスマッチ、企業文化への不適合、給与や待遇への不満などが考えられます。中途採用者は、前職での経験やスキルを活かして即戦力として活躍することが期待されていますが、企業側との認識のズレや、職場環境への適応がうまくいかずに早期離職に至るケースも少なくありません。また、転職活動時に提示された条件と実際の待遇に差があった場合も、早期離職につながる可能性があります。
2.2 入社3年未満での離職
入社3年未満での離職も、企業にとって大きな損失となります。3年という期間は、一人前の社員として育成するための投資期間でもあるため、この時期での離職は企業の将来的な成長にも影響を及ぼします。離職の要因としては、キャリアパスへの不安、成長機会の不足、責任ある仕事への挑戦機会の少なさなどが挙げられます。また、職場の人間関係やワークライフバランスも、離職の要因となる可能性があります。
年次 | 離職要因の例 |
---|---|
1年目 | 研修内容が不足、配属部署とのミスマッチ、上司・同僚との人間関係 |
2年目 | 担当業務のマンネリ化、キャリアアップへの道筋が見えない、給与への不満 |
3年目 | 責任ある仕事への挑戦機会が少ない、他社からの引き抜き、結婚・出産などのライフイベント |
上記は一例であり、企業や業界、個人の状況によって異なる場合もあります。
2.3 入社5年未満での離職
入社5年未満での離職は、企業にとって中長期的な戦略に影響を与える可能性があります。5年という期間は、社員が専門性を高め、組織の中核を担う人材へと成長する重要な時期です。この時期での離職は、組織力の低下やノウハウの流出につながる可能性があります。離職の要因としては、管理職への昇進機会の不足、給与や待遇への不満、企業の将来性への不安などが挙げられます。また、結婚、出産、育児、介護などのライフイベントの変化に伴い、ワークライフバランスの見直しを迫られ、離職を選択するケースも少なくありません。
企業は、社員のライフステージの変化に対応した柔軟な働き方を提供することで、優秀な人材の流出を防ぐ必要があります。