ニュースなどでもよく目にすることもあると思いますが、日本の企業は女性の管理職が少ないというのは周知の事実でしょう。
日本の企業で管理職を目指す女性にとって、キャリアアップの壁となる「管理職の少なさ」と「ワークライフバランス」は課題となっています。
元々、日本の企業文化は戦後の高度経済成長期にできあがったもので、基本的に男性が働いて女性は家庭という昔ながらの考え方があり、また「終身雇用」「年功序列」「長時間労働」が当たり前で、フルタイムで働き続けられる人=男性という構造になっていると言われています。
本記事では、日本の女性管理職の現状と課題をデータで示し、他国との比較や要因について解説します。
1. 管理職に女性が少ない日本の現状
日本では、管理職に占める女性の割合が依然として低い状況にあります。男女共同参画社会の実現が叫ばれる中、企業における女性の活躍推進は喫緊の課題となっています。以下では、日本の企業における女性管理職の現状、国際比較、そして女性管理職が少ない要因について詳しく見ていきます。
1.1 日本の企業における女性管理職比率の現状
内閣府男女共同参画局が公表している「令和4年度男女共同参画白書」によると、日本の企業における女性管理職の割合は令和3年度時点で13.2%となっています。これは、諸外国と比較しても低い水準であり、女性の活躍推進に向けた更なる取り組みが必要であることを示しています。
業種別に見ると、女性管理職の割合が高い業種は、宿泊業、飲食サービス業、医療、福祉などであり、低い業種は、建設業、製造業、情報通信業などとなっています。企業規模別に見ると、企業規模が大きいほど女性管理職の割合が高い傾向にあります。
1.2 他国と比較した日本の女性管理職の少なさ
OECDのデータによると、日本の女性管理職の割合は加盟国中最下位グループに属しています。アメリカやヨーロッパ諸国では、女性管理職の割合が30%を超える国も多く、日本との差は歴然としています。 この国際的な比較からも、日本における女性管理職の少なさが際立っていることがわかります。
国名 | 女性管理職比率(%) |
---|---|
日本 | 13.2 (令和3年度) |
アメリカ | 43.4 (2020年) |
フランス | 45.3 (2020年) |
ドイツ | 30.6 (2020年) |
※上記の数値はあくまでも参考値であり、調査時期や定義によって異なる場合があります。
1.3 女性管理職が少ない要因
女性管理職が少ない要因は複雑に絡み合っており、一つに絞ることはできません。長時間労働を前提とした企業文化や、育児・介護と仕事の両立の難しさ、女性に対するアンコンシャスバイアス、ロールモデルの不足などが挙げられます。 また、女性自身が管理職を目指さない、あるいは目指せないという意識も影響していると考えられます。これらの要因が複合的に作用し、女性管理職の少なさにつながっていると言えるでしょう。
加えて、結婚や出産を機に退職してしまう女性が多いことも、管理職候補となる女性の数を減少させる一因となっています。 企業は、女性がキャリアを継続できるような環境整備を進める必要があります。
2. ワークライフバランスの課題と企業の取り組み
ワークライフバランスは、仕事と私生活の調和を意味し、従業員の満足度や生産性向上に大きく関わります。特に、管理職への昇進を目指す女性にとって、ワークライフバランスへの配慮は重要な要素となります。しかし、現状では多くの課題が存在し、企業による積極的な取り組みが求められています。
2.1 長時間労働の問題と女性管理職への影響
長時間労働は、日本の企業文化における大きな課題であり、特に女性管理職への影響は深刻です。長時間労働は、家庭での時間や育児・介護への時間を圧迫し、女性が管理職として活躍することを阻む要因となっています。管理職は責任も重く、負担も大きいため、長時間労働になりがちです。ワークライフバランスを実現するためには、労働時間の削減と効率的な働き方の推進が不可欠です。厚生労働省の働き方改革では、時間外労働の上限規制などが定められています。
2.2 育児・介護と仕事の両立の難しさ
出産や育児、親の介護などは、女性がキャリアを継続する上で大きな壁となります。仕事と育児・介護の両立支援制度が整っていない企業では、女性が管理職に昇進することを諦めざるを得ない状況も少なくありません。保育園の待機児童問題や、介護施設の不足なども、両立を困難にする要因となっています。企業は、育児・介護休業制度の充実や、柔軟な働き方の導入など、従業員が安心して仕事と家庭を両立できる環境を整備する必要があります。
2.3 企業が取り組むべきワークライフバランス施策
企業は、従業員のワークライフバランスを実現するために、様々な施策に取り組む必要があります。以下に具体的な例を挙げます。
2.3.1 柔軟な働き方の導入
フレックスタイム制やテレワークなど、柔軟な働き方を導入することで、従業員は自分のライフスタイルに合わせて働くことができます。 これにより、育児や介護との両立もしやすくなり、仕事へのモチベーション向上にも繋がります。例えば、コアタイムを設けないフルフレックス制度や、自宅以外での勤務を可能にするモバイルワークなども有効な手段です。
2.3.2 男性の育児休業取得促進
男性の育児休業取得を促進することで、育児の負担を夫婦で分担することができ、女性のキャリア継続を支援することに繋がります。 企業は、男性従業員が育児休業を取得しやすい雰囲気づくりや、取得後のキャリアへの影響がないような配慮を行う必要があります。男性の育児参加は、少子化対策にも貢献するとされています。
2.3.3 社内保育所の設置や育児支援サービスの提供
社内保育所の設置や、ベビーシッターサービスなどの育児支援サービスを提供することで、子育て中の従業員は安心して仕事に集中することができます。 これらの施策は、従業員の定着率向上にも効果的です。企業によっては、病児保育や、育児に関する相談窓口などを設置しているところもあります。
施策 | メリット | 注意点 |
---|---|---|
フレックスタイム制 | 従業員の時間の自由度向上 | 勤怠管理の徹底が必要 |
テレワーク | 通勤時間削減、柔軟な勤務場所 | 情報セキュリティ対策の強化 |
男性育休 | 育児負担の軽減、女性のキャリア支援 | 周囲の理解と協力体制の構築 |
社内保育所 | 子育て中の従業員の安心感向上 | 設置・運営コストの負担 |
これらの施策を効果的に実施するためには、経営層のコミットメントと、従業員一人ひとりの意識改革が不可欠です。ワークライフバランスの実現は、企業の持続的な成長にも大きく貢献する重要な要素です。
管理職の女性が少ない日本の現状 | まとめ
今回解説したように日本では、女性管理職の比率が依然として低い現状があります。
その要因として、長時間労働や育児・介護との両立の難しさといったワークライフバランスの課題が挙げられます。
また日本独特の企業文化も根強く残っており、そういった複雑な要因も女性管理者の少なさに繋がっていると言えます。
企業は、柔軟な働き方の導入や男性の育児休業取得促進、育児支援サービスの提供など、ワークライフバランスを改善するための施策に取り組む必要があるでしょう。