夏の暑さから従業員を守る効果的な熱中症対策、お探しではありませんか?
本記事では、熱中症の深刻な現状と企業への影響を解説し、屋内外それぞれの具体的な対策、暑さ指数(WBGT)の活用方法、そして万が一の場合の応急処置などを解説します。
従業員の熱中症を防ぐ!企業が取り組むべき対策と応急処置
1. 熱中症の危険性と現状
熱中症は、高温多湿な環境に体が適応できず、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなることで起こります。症状は軽度の場合、めまいや立ちくらみ、筋肉痛、大量の発汗などですが、重度になると意識障害や痙攣、高体温などを引き起こし、最悪の場合、死に至るケースもあります。
熱中症は決して軽視できるものではなく、迅速な対応と予防が不可欠です。
1.1 熱中症による死傷者数の現状
厚生労働省の調査によると、2022年の職場における熱中症による死傷者数は1,581人、うち死亡者数は42人でした。2023年は、職場における熱中症死傷者数は1,106人で、うち31人が死亡という結果になっています。業種別に見ると、建設業や製造業など、屋外作業が多い業種で発生件数が多い傾向にあります。
また、屋内作業でも、高温多湿な環境や、エアコンの不適切な使用などによって熱中症のリスクがあります。熱中症は、業種や職場環境に関わらず、誰もが注意すべき重要な健康問題です。
1.2 熱中症が企業にもたらす影響
熱中症は従業員の健康を害するだけでなく、企業活動にも大きな影響を及ぼします。従業員が熱中症で倒れると、作業の中断や遅延、生産性の低下につながります。
また、重症化して入院が必要な場合は、医療費の負担や休業補償の発生など、企業の経済的な損失も大きくなります。さらに、熱中症の発生は企業イメージの低下にもつながりかねません。
熱中症対策は、従業員の健康を守るだけでなく、企業の安定的な経営のためにも重要な経営課題と言えるでしょう。
影響 | 詳細 |
---|---|
生産性低下 | 従業員の欠勤や作業効率の低下により、生産性が低下する可能性があります。 |
経済的損失 | 医療費や休業補償、損害賠償など、経済的な負担が生じる可能性があります。 |
企業イメージ低下 | 熱中症対策が不十分とみなされると、企業イメージが低下する可能性があります。 |
労災発生リスク増加 | 熱中症は業務災害となる可能性があり、企業は労災保険の適用や再発防止策の検討など、対応が必要になります。 |
企業は、熱中症のリスクを正しく認識し、適切な対策を講じることで、従業員の健康を守り、生産性の向上、企業イメージの維持・向上に繋げることが重要です。
2. 職場における熱中症対策
職場における熱中症対策は、従業員の健康と安全を守る上で非常に重要です。屋内、屋外を問わず、様々な対策を講じる必要があります。具体的な対策を以下に示します。
2.1 屋内と屋外の対策
屋内と屋外では、それぞれ異なる対策が必要です。以下に、それぞれの場合の具体的な対策をまとめました。
2.1.1 屋内での対策
- 室温管理:エアコンや扇風機を効果的に使用し、室温を適切に管理しましょう。厚生労働省では、事務所衛生基準規則第5条3項において、事業者は室の気温が17℃以上28℃以下および相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならないと定めています。
- 換気:定期的に換気を行い、新鮮な空気を取り込みましょう。窓を開ける、換気扇を使用するなど、状況に応じて適切な方法を選びます。
- 遮光:直射日光を遮るために、カーテンやブラインドを使用しましょう。特に西日が強い場合は、効果的な遮光が必要です。
- 服装:通気性の良い服装を推奨しましょう。クールビズなど、軽装での勤務を許可することも有効です。
- 水分補給:こまめな水分補給を促しましょう。ウォーターサーバーの設置や、水分補給を促すポスターの掲示なども有効です。
2.1.2 屋外での対策
- 日陰の確保:作業場所には、日陰を設けましょう。テントやパラソルなどを活用することで、直射日光を避けることができます。
- 休憩場所の確保:涼しい場所で休憩できるよう、休憩場所を確保しましょう。エアコンの効いた休憩室や、日陰の休憩スペースを用意することが重要です。
- 服装:通気性の良い、吸汗速乾素材の作業服を着用しましょう。帽子やヘルメットも着用し、直射日光から頭部を守ります。空調服の導入も効果的です。
- 水分・塩分補給:こまめな水分・塩分補給を徹底しましょう。スポーツドリンクや経口補水液を用意し、塩分も補給できるようにします。水筒の携帯も推奨します。
- 作業時間調整:気温の高い時間帯は作業を避け、涼しい時間帯に作業を行うようにしましょう。作業時間を短縮することも検討します。
2.2 暑さ指数(WBGT)の活用方法
暑さ指数(WBGT)は、熱中症の危険度を評価するための指標です。WBGT値に基づいて、適切な熱中症対策を実施しましょう。
WBGT計を用いて作業場所のWBGT値を測定し、以下の基準値を参考に、休憩時間の設定や作業内容の変更、作業の中止などの対策を検討します。
WBGT値 | 作業区分 | 対策 |
---|---|---|
31℃以上 | 激しい労働 | 原則として作業中止 |
28~31℃ | 激しい労働 中等度労働 軽労働 | 厳重警戒、作業を短縮する、休憩回数を増やすなど |
25~28℃ | 激しい労働 中等度労働 軽労働 | 警戒、休憩をこまめにとる、水分・塩分補給を促すなど |
WBGT値は、環境省の熱中症予防情報サイトなどで確認できます。
2.3 具体的な対策事例
以下に、具体的な熱中症対策事例を紹介します。
- クールビズの導入:ノーネクタイ、ノージャケットなど、軽装での勤務を許可することで、従業員の体感温度を下げることができます。
- ウォーターサーバーの設置:従業員がいつでも簡単に水分補給できるように、ウォーターサーバーを設置します。
- 塩分タブレットの配布:屋外作業員など、汗を大量にかく従業員には、塩分タブレットを配布し、塩分補給を促します。
- 熱中症対策セミナーの実施:従業員向けに熱中症対策セミナーを実施し、正しい知識の普及と意識向上を図ります。
- WBGT計の導入:作業現場にWBGT計を設置し、WBGT値を定期的に測定することで、熱中症の危険度を把握します。
- アラートシステムの導入:環境省の熱中症警戒アラートなどを活用し、危険度が高い場合は、作業の中止や休憩時間の延長などの対策を講じます。
3. 熱中症の応急処置
従業員が熱中症の症状を示した場合、迅速かつ適切な応急処置が重要です。一刻も早く対処することで、重症化を防ぎ、回復を早めることができます。
3.1 症状別の適切な対応
熱中症の症状は軽度から重度まで様々であり、それぞれの症状に応じた適切な処置が必要です。以下の表を参考に、症状に合わせた応急処置を行いましょう。
症状 | 対応 |
---|---|
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛・こむら返り | 涼しい場所に移動し、衣服を緩めて風通しを良くする。スポーツドリンクや経口補水液、塩分を含んだ飲み物を与え、安静にする。 |
頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感 | 涼しい場所に移動し、衣服を緩めて風通しを良くする。スポーツドリンクや経口補水液を与え、安静にする。症状が改善しない場合は医療機関へ搬送する。 |
意識障害、痙攣、高体温 | 直ちに救急車を要請する。涼しい場所に移動し、衣服を緩めて風通しを良くする。首、脇の下、鼠径部を冷やす。水分が摂取できる状態であれば、経口補水液などを与える。 |
出典:厚生労働省「熱中症の予防方法と応急処置」
3.2 医療機関への搬送
以下のいずれかに該当する場合は、速やかに医療機関へ搬送しましょう。迷った場合は、救急相談センター(#7119) に連絡し指示を仰ぎましょう。
- 意識がない、呼びかけに応答しない
- 痙攣を起こしている
- 呼吸がおかしい、呼吸困難
- 高体温である
- 応急処置後も症状が改善しない
搬送中は、患者を涼しい場所に寝かせ、引き続き冷却を続けましょう。また、救急隊員に患者の症状や経過を伝えることも重要です。
迅速な判断と行動が、熱中症患者の命を救います。従業員の安全を守るため、正しい知識を身につけ、適切な対応を心がけましょう。
企業が取り組むべき熱中症対策 | まとめ
従業員の熱中症対策は、企業にとって安全配慮義務の観点からも非常に重要です。
厚生労働省も熱中症予防対策を強く推奨しており、企業は積極的に取り組む必要があります。
本記事では、熱中症の危険性と現状、職場における対策(屋内外、WBGT活用、事例)、応急処置について解説しました。
特に、暑さ指数(WBGT)を活用した適切な休憩や水分補給は、熱中症予防に効果的です。企
業は、これらの情報を参考に、従業員の健康と安全を守るための対策を徹底し、生産性と企業イメージの向上に繋げましょう。