2024年の年末から議論されていた「年収103万円の壁」の見直しを含む税制関連法案が、2024年3月4日に衆議院を通過しました。
これにより、所得税がかかり始める年収が103万円から160万円に引き上げられることが決定しましたね。
今回は今話題の「103万円の壁」が実際どういったものなのかについて解説します。
1. 年収103万円の壁:その定義と影響
「年収103万円の壁」とは、パートやアルバイトなどで働く人の年収が103万円を超えると、税金や社会保険料の負担が増加したり、扶養から外れることをにより家族の控除が減少したりするなど、経済的な影響が生じる境界線を指します。
この壁は、税制や社会保険制度の仕組みが複雑に絡み合って生じるもので、働き方や家計に大きな影響を与える可能性があるため、理解しておくことが重要です。
1.1 パート・アルバイトへの影響
パートやアルバイトで働く人にとって、年収103万円は所得税の課税開始点となるため、103万円を超えると所得税の納税義務が生じます。また、年収が130万円を超えると住民税の納税義務も発生します。
これらの税金は、給与から天引きされるため、手取り収入が減少します。
1.1.1 扶養範囲内で働く場合のメリット・デメリット
配偶者や親の扶養内で働く場合、年収が103万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となり、扶養者の税負担が軽減されます。
しかし、年収が103万円を超えると扶養から外れ、控除が受けられなくなるため、世帯全体の収入が減少する可能性があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
扶養範囲内 |
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扶養範囲外 |
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上記は一般的な例であり、個々の状況によってメリット・デメリットは異なります。
詳しくは国税庁のウェブサイトなどを参照ください。
1.2 世帯収入への影響
年収103万円の壁は、世帯収入にも影響を及ぼします。
特に、扶養内で働く配偶者や子が103万円を超えた場合、世帯全体の収入が減少する可能性があります。
これは、扶養控除がなくなることによる税負担の増加と、社会保険料の負担増加が原因です。
また、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁など、103万円以外にも複数の壁が存在し、それぞれ社会保険や税金に影響を与えるため、注意が必要です。
1.2.1 配偶者控除・扶養控除との関係
配偶者控除や扶養控除は、扶養親族の年収が一定額以下であることを条件に、納税者の税負担を軽減する制度です。
年収103万円を超えるとこれらの控除が受けられなくなるため、税負担が増加し、世帯全体の収入が減少する可能性があります。
2. 103万円の壁撤廃!改正後の制度と減税効果
2024年末から大きな議論を呼んだ「年収103万円の壁」。この壁の撤廃を目的とした税制改正により、家計への影響や働き方について様々な変化が予想されます。ここでは、改正後の制度と減税効果について詳しく解説します。
2.1 基礎控除・給与所得控除の変更点
今回の改正の大きな柱は、基礎控除と給与所得控除の変更です。
これにより、所得税の課税対象となる所得が減り、結果として減税効果が期待されます。
2.1.1 具体的な控除額の変化
改正前の基礎控除は一律48万円でしたが、改正後は年収に応じて段階的に引き上げられます。給与所得控除も最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。
以下に具体的な控除額の変化を示します。
年収 | 改正前 基礎控除 | 改正後 基礎控除 | 給与所得控除の最低保障額 |
---|---|---|---|
200万円以下 | 48万円 | 95万円 | 65万円 |
200万円超475万円以下 | 48万円 | 88万円(2年間の時限措置)その後58万円 | 65万円 |
475万円超665万円以下 | 48万円 | 68万円(2年間の時限措置)その後58万円 | 65万円 |
665万円超850万円以下 | 48万円 | 63万円(2年間の時限措置)その後58万円 | 65万円 |
850万円超2545万円以下 | 48万円 | 58万円 | 65万円 |
出典:総務省|令和6年度税制改正|所得税の基礎控除額の引上げ
2.2 特定扶養控除の変更点
特定扶養控除も改正の対象となりました。これまでは、扶養親族の年収が103万円を超えると控除が受けられなくなっていましたが、改正によりこの要件が緩和されます。
2.2.1 子を持つ家庭への影響
改正により、特定扶養控除の対象となる子の年収要件が103万円から150万円に引き上げられました。また、150万円を超えた後も控除額が段階的に減額される仕組みが導入され、子の収入増加による世帯の手取り減少を抑制する効果が期待されます。
この変更は、子育て世帯の経済的負担を軽減する上で大きな意味を持ちます。
2.3 年収別減税額シミュレーション
基礎控除、給与所得控除、特定扶養控除の変更により、世帯の構成や年収によって減税額は異なります。
以下にいくつかのケーススタディを示し、具体的な減税額をシミュレーションしてみましょう。
2.3.1 単身世帯、共働き世帯、専業主婦家庭のケーススタディ
単身世帯の場合、年収200万円であれば年間約2万4000円の減税となります。
年収300万円から600万円までは約2万円の減税、年収800万円では約3万円の減税となります。
共働き世帯の場合、夫婦それぞれの年収が200万円であれば合計で年間約4万7000円の減税となります。
夫が働き妻が専業主婦の世帯では、夫の年収が300万円や400万円の場合は年間約2万円の減税となります。
これらのシミュレーションはあくまで一例であり、実際の減税額は個々の状況によって異なります。
これらの改正は、働き方や家計に大きな影響を与えることが予想されます。
特に、パートやアルバイトで働く人にとっては、税負担の軽減を実感できる可能性があります。
ただし、社会保険料の壁など、依然として残る課題もあるため、今後の動向に注目していく必要があります。