インボイス

【2025年最新】個人事業主が知っておくべきインボイス対応策

2024年8月28日

2023年10月1日からスタートされたインボイス制度ですが、早くも1年6カ月が過ぎました。

2025年はインボイス制度が施行されてから2回目の確定申告となりました。

そして去年実施された初の確定申告で個人事業主の消費税申告件数が昨年の約2倍となる197万件を超えたことが国税庁によって明らかになりました。

この大幅な増加は、制度に新たに登録し、消費税の納税義務が生じた小規模事業者が増えたためと考えられています。

報告によれば、制度開始後の昨年行われた確定申告では、申告件数が昨年の105万5000件から197万2000件に増加し、納税額も約6850億円と、前年比573億円増の増加が見られました。この増加は、インボイス制度に登録し、新たに納税義務を負った約87万人の事業主によるものです。

今年は昨年様子を見ていた人が新たにインボイス登録をして、初めて消費税を確定申告をするという方もいらっしゃると思います。

インボイス制度の登録は任意であり、税負担を避けるために登録をしていない事業者もいますが、未登録の事業者は仕入れ税の控除が受けられないため、取引先から価格の値下げを一方的に要求されるケースも増えているという問題が発生しています。

ただインボイス制度には根強い反対があります。

事務作業が増えるなどの事業者負担が多いということや、実際1年間やってみてどれくらいの手間がかかるのかが分かった企業やフリーランスからの意見も存在します。

本記事では、今さら聞けない個人事業主が知っておくべきインボイス制度について解説します。

個人事業主が知っておくべきインボイス対応策

これからインボイスに登録を計画している個人事業主は様々な対応が必要となります。

具体的な対応策を4つのポイントに絞って解説します。

1 登録手続き

インボイスを発行して課税事業者となることを選択した場合、事前に税務署への登録が必要です。

登録手続きには以下の2種類があります。

  1. 新規登録:これまで一度も税務署に登録したことがない場合
  2. 課税事業者選択届出書:免税事業者から課税事業者へ変更する場合

いずれの場合も、手続きには期限が定められています。期限内に忘れずに手続きを行いましょう。

詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。

2 帳簿管理・請求書発行

インボイス制度導入に伴い、帳簿管理や請求書発行の方法を見直す必要があります。

具体的には、以下の3つの項目に関する情報を帳簿に記録し、請求書にも記載する必要があります。

  1. 適用税率:標準税率(10%)、軽減税率(8%)、免税のいずれかを記載
  2. 消費税額:適用税率に基づいた消費税額を記載
  3. 登録番号:税務署に登録した際に付与される登録番号を記載

これらの情報を正確に記録・記載するために、会計ソフトの導入や請求書発行システムの変更を検討する必要があるかもしれません。無料で利用できる会計ソフトもありますので、freeeマネーフォワード クラウドなどを検討してみましょう。

3 取引先との交渉

インボイス制度導入は、取引先との関係にも影響を与える可能性があります。

特に、これまで免税事業者として取引を行ってきた場合、課税事業者となることで取引価格の見直しが必要となるケースがあります。取引価格の見直しは、以下の2つの点で重要となります。

  1. 消費税分の負担:インボイス制度導入により、消費税分の負担をどちらが負うのか明確にする必要があります。これまで通り、請求金額に消費税を含めるのか、別途請求するのか、事前に取引先と十分に協議しましょう。
  2. 価格交渉:課税事業者となることで、消費税分のコスト増が発生する可能性があります。取引先との力関係にもよりますが、価格交渉が必要となるケースも想定しておきましょう。

4 価格設定の見直し

インボイス制度導入を機に、自身のビジネスの価格設定を見直すことも重要です。

特に、これまで免税事業者として活動してきた場合、課税事業者となることで価格競争力が低下する可能性があります。

価格設定の見直しは、以下の2つの点を考慮しながら行いましょう。

  1. 原価計算:材料費や人件費などの原価を正確に把握し、利益を確保できる価格設定になっているか確認しましょう。
  2. 市場調査:同業他社の価格設定や顧客ニーズを調査し、自社の商品やサービスの価値に見合った価格設定になっているか検討しましょう。

価格設定は、ビジネスの成功を左右する重要な要素です。

安易な値上げは顧客離れに繋がる可能性もあるため、慎重に進める必要があります。

なぜインボイス制度が反対されてるの?

冒頭でもお伝えしましたが、多くの中小事業者やフリーランスにとって大きな負担となっており、制度に対する反対の声が根強くあります。

なぜこの制度がこれほどまでに批判されているのでしょうか。

主な理由を3つに分けて説明します。

1. 仕入税額控除の条件が厳しくなる

これまで、消費税の仕入税額控除は通常の請求書があれば可能でした。しかし、インボイス制度の開始により、仕入税額控除を適用するためには「適格請求書(インボイス)」が必要になりました。

この適格請求書を発行できるのは、あらかじめ「適格請求書発行事業者」として税務署に登録した事業者だけです。

つまり、今後は仕入先にインボイスを発行してもらわなければ、仕入税額控除ができなくなってしまうのです。

こうした変更に伴って、事業者間のやり取りが煩雑になり、会計処理や確認作業の負担が大きくなることが懸念されています。

2. 免税事業者の取引リスク

制度開始後、多くの課税事業者はインボイスを受け取らなければ仕入税額控除ができないため、免税事業者との取引を敬遠する可能性が出てきました。

その結果、免税事業者は「インボイスを発行できない」という理由で取引先を失うリスクにさらされることになります。

場合によっては、これまでどおり取引を継続するために「消費税分を差し引いた価格での取引」を求められることもあり、収益の圧迫につながりかねません。

3. 消費税の納税義務が発生する

インボイスを発行するには、課税事業者として登録する必要があります。これまでは免税事業者として消費税の納税が不要だった人も、インボイスを発行する以上は申告・納税の義務が発生します。

特に利益率の低い業種や小規模事業者にとっては、消費税の負担が重くのしかかることになります。

また、これに伴って発生する帳簿管理や申告手続きのための時間・コストも無視できません。

インボイス制度の2割特例ってなに?

インボイス制度の導入により、これまで免税事業者だった小規模事業者が課税事業者(インボイス発行事業者)へと転換するケースが増えています。

そうした中、税負担の急激な増加を緩和する目的で設けられたのが「2割特例」です。

これは、インボイス発行事業者に転換した中小規模の事業者を対象に、一定期間、消費税の納税額の計算に際して特例的な優遇を受けられる制度です。

またインボイス発行事業者の登録が国の想定よりも少なかったのも導入の理由ろ言われています。

具体的な仕組み

本来、消費税は売上に対する消費税から、仕入や経費で支払った消費税を差し引いた差額を納めます。

しかしこの特例では、仕入税額控除を簡略化し、売上に対して課される消費税額のおおよそ20%を納税額とすることができます。

計算式は以下の通りです:

売上高(※1) × 10/110(※2) × 0.2 = 納税額

※1:インボイス発行事業者となった日以降の売上が対象
※2:軽減税率が適用される場合は「8/108」で計算

この簡便な計算方式により、帳簿や請求書を細かく確認せずとも納税額が算出できるため、事務負担の軽減にもつながります。

具体的な計算例

・売上:500万円(税抜)
・消費税率:10%
・売上消費税:50万円
→ 通常の原則課税:
仕入消費税が30万円なら、納税額は 50万 - 30万 = 20万円
→ 2割特例適用時:
納税額は 50万円 × 20% = 10万円
→ 実際の仕入額によっては、特例を使った方が有利になる場合があります。

適用対象となる要件

2割特例は、すべての事業者が無条件に利用できるわけではありません。

以下の要件をすべて満たしている必要があります。

① インボイス発行事業者に移行したこと
これは最も基本的な条件です。令和5年10月1日以降、免税事業者であった者が自ら課税事業者となり、インボイス発行事業者の登録を受けている必要があります。

② 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
「基準期間」とは、個人事業者であれば2年前、法人であれば前々事業年度を指します。この期間の課税売上が1,000万円を超えていると、すでに課税事業者であるため、本特例の対象にはなりません。

③ 適用可能な期間に該当すること
2割特例は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間に対応する課税期間に適用可能です。個人事業主であれば、最長で「令和8年分」の確定申告まで使えます。

インボイス制度対応策 | まとめ

いかがでしたか?

インボイス制度が導入され一年以上経ちますが、メリットデメリットなどが見えてきたことと思います。

未だにインボイス制度を反対している人は多くいますが、すぐに廃止になるということはなさそうです。

今年からインボイスに登録しようと検討されている方は、今回お話ししポイントに注意しながら登録の準備をすすめてはいかがでしょうか。

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